Feb 11, 2021

新規事業における「マネタイズの壁」は、超えられるのか──「New Business Meetup~新規事業開発 4つの壁の乗り越え方~」オンラインセミナー登壇ふりかえりインタビュー

Game Changer Catapult

新規事業における「マネタイズの壁」は、超えられるのか──「New Business Meetup~新規事業開発 4つの壁の乗り越え方~」オンラインセミナー登壇ふりかえりインタビュー

Written by Game Changer Catapult 事務局

テーマは、新規事業に挑む者なら誰もが知りたい「マネタイズ」の壁。

2020年12月17日(木)に開催された、新規事業コミュニティ「New Business Way」(SPEEDA:㈱ユーザベース 運営)主催のオンラインイベント「New Business Meetup~新規事業開発 4つの壁の乗り越え方~」に、Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト、以下:GCカタパルト)(※1)事業総括の真鍋馨が登壇しました。

スタイルは、チャット欄に書き込まれる視聴者からの質問や感想にリアルタイムで反応していく、ライブ感に満ちたもの。これまでの経験や実例をもとに、新規事業創出の壁となるマネタイズ、経営層の説得方法に関する悩みや課題など、熱いディスカッションが繰り広げられました。

本インタビューでは、セミナーへの登壇で感じたことや言い尽くせなかったことなどを語ります。

新規事業もセミナーも、インタラクティブに

Picture of chaptar1-image_新規事業もセミナーも、インタラクティブにオンラインセミナー当日の様子

企業の中で新規事業開発を進める過程でぶつかる壁はいくつもありますが、今回、私に登壇のお声がけを頂いたのは「マネタイズ」に着目するセッションでした。

まず全体を通して、あ、この感じいいなと思ったのは、登壇者と参加者が一体となって会話をしながら進めるインタラクティブなスタイル。当日の参加者は400人ほどで、Zoomのチャット欄にリアルタイムで書き込まれる質問のなかから、モデレーターがその場でピックアップしたいくつかのイシューと、事前に行われたアンケートの集計結果をもとに、予めの答えなく、チャットの感想もフィードバックしながらどんどん議論が進んでいきました。

GCカタパルトも、毎年新たな事業アイデアをコンセプト段階からオープンに世の中へ発信(今年はTOAワールド・ショーケース東京2021(※1)へ参加予定)していますが、これも、想定する顧客や、様々な価値観の人たちと直接対話するインタラクティブな視点を大切にしているからです。多くの共感や反響が得られるアイデアは、ある意味社会から求められているとも言え、マネタイズの前段階としても大事なポイントだと思います。今年の新たな事業アイデアお披露目は、オンラインイベントの特長を活かす必要があるため、その意味でも学びの多いセミナーでしたね。

社会課題解決への第一歩は、1人ひとりのくらしに寄り添うこと

Picture of chaptar2-image_社会課題解決への第一歩は、1人ひとりのくらしに寄添うこと

社会課題の解決に貢献できるくらい大きくて強いビジネスにしようと思うと、マネタイズが絡んできます。強いビジネスモデルに磨き上げられてはじめて、社会に貢献できるまでに広がるという考えはその通り、ただその実現は簡単でなく、悩みながら試行錯誤の日々です。セッションでも多く頂いた質問として、社会課題とマネタイズに関して、NPO的なやり方は分かるがビジネスとしてどう考えたらいいか、というものがありました。

一つの考え方として自分なりにお伝えしたのですが、社会課題ってとても大きく、漠然としていて抽象的なので、それ自体をいきなり直接解くことは難しいのではないかと。その実現に向けては、より身近でミクロな視点で考えることで、抽象的な社会課題を、具体的な顧客課題として解像度を上げていくのが第一歩なのかなと感じます。

1人ひとりのくらしに、徹底的に寄り添っていく

Picture of chaptar3-image_1人1人の暮らしに、徹底的に寄り添っていく

私たちの活動でも、顧客起点で考え行動すること、つまり、生活者1人ひとりのくらしの願いや困りごとに、徹底的に寄り添うことを大切にしています。自分自身や家族、大切な人たちの抱えている課題は、自分ゴトとして何とか解決したいという想いで行動に繋がりやすく、とても大切なポイントだなと感じます。

マネタイズにかこつけて言うと、顧客に寄り添って課題を解決するビジネスに価値を感じていただけた結果が利益。1人ひとりの顧客の課題はビジネスとしては小さくても、それを紡いで広がった先にある、顧客の集合体としての社会課題解決を実現でき、世の中から必要とされた結果が利益として、その企業の存在意義になっていく。だから、マネタイズは大事だなと。

そして、これもセッションでお話したのですが、マネタイズできるかは、お金を払ってもらえるかどうかで決まるという、商売をする上で当たり前の現実。だから、まだまだ不完全なプロトタイプの商品やサービスでも、顧客の課題を解決できているか、何に価値を感じて頂けるかを見極め、それを最小のコストで実現できるか、持っている技術やアセットは役立つか、検証をするわけです。なので、事業のコンセプトがある程度考えられたら、できるだけ早い段階から実際にお金を払って頂く上で顧客と対話し、フィードバックを改善に活かすことが大事だと思います。やってみて感じますが、お金を払うベースなのか、そうでないのかで、顧客の行動や反応は全く違うくらい異なります。顧客が心から欲する=お金を払い続けてもらえるくらい、使い続けてもらえるかはマネタイズの大きな壁で、本当に悪戦苦闘する点ですね。

どうしても立ちはだかる、社内の壁

Picture of chaptar4-image_どうしても立ちはだかる、社内の壁

セミナーには、企業で新規事業開発を担当する方が多く参加してくださっていたからだと思うんですが、経営幹部や上司が事業を承認してくれなくて予算がつかない、次のアクションにゴーが出ない、と悩まれている声は多かったです。自分たちや周りでももちろん直面します。

当然ですが、どんな企業や組織でも、業務(事業活動)でやっている以上は説明責任が伴い、節目のタイミングで適切なレイヤーで経営判断をするのは必要でしょう。ただ、新規事業は不確実性がどうしても高く、やる前から絶対儲かるとは証明できないわけです。それでも将来の事業価値に投資する、失敗も許容するという経営判断ができるかは、最終トップのコミットメントなのですが、説明する側はそれを引き出す・心を動かす伝え方も大事だと感じます。

セッションでは、一つのやり方として私たちの活動で得たヒントをお伝えしたのですが、まず顧客・社会に求められているというファクトを示すこと。加えてなぜこの会社がそれをやるのかという戦略的意義、そしてなぜ自分たちがやれるのか+責任を持ってやりきるというコミット。これらを聞き手にシンプルに伝わりやすくストーリーにするということです。それでもうまくいかないこともありますが、そこは修正しながらあきらめずにやり続ける、というのが大切だなと思います。

鍵はパッション、あきらめないこと

Picture of chaptar5-image_鍵はパッション、あきらめないこと

実際、GCカタパルトの事業アイデアも、継続検討せず、の経営判断を受けますが、そこで区切りとするか、次のチャンスに向けてあきらめず道を探すか、結局やるかやらないかは自分次第かもしれません。

例えば、業務外でサークル活動を継続して、次のチャンスを狙うとか。高齢者の嚥下障害という食の課題を解決するDelisofter(デリソフター)を生み出した「GIFMO(ギフモ)」のチームは、そういう状況も経て今に至っている、あきらめなかった人たち。もがきながらも頑張っている人たちは、たくさんいます。

新規事業を、前に進めるためには

Picture of chaptar6-image_新規事業を、前に進めるためには

新規事業を前に進めるためには、自分が何をしたいのか、なぜそれをやりたいのか、顧客と向き合うことと同時に自分と向き合うことが重要だと思います。

顧客と向き合うとは、顧客視点でいかに問いや仮説を立てるか、という発想力が問われます。なぜその顧客はそれを課題と感じているのか(自覚していないことも含め)、そしてなぜそれを自分が解決したいのか、を自分に問い続け行動で示す。さらに、そこにインパクトを持たせるために、社内の承認を少しでも得やすくするための努力、それは目の前の仕事に対し責任を果たすことで周囲から信頼や応援を得られるように努めることかも知れないですが、コミットするということなのだと思います。

できうる最善を尽くし、誰よりも準備する。顧客と真摯に向き合い、厳しいフィードバックも含め、軌道修正を繰り返す新規事業の醍醐味を楽しむことでしょうね。

ーーー
(※1)Game Changer Catapultとはパナソニックの家電部門カンパニーであるアプライアンス社内で、2016年から活動をスタートさせたオープンイノベーションプロジェクト。「未来のカデン」を生み出すため、新規事業アイデアを広く募集し、選考を通過したテーマについては、新規事業立ち上げのためのノウハウ提供などの支援を行う。これまで世界最大級のビジネス・クリエイティブ・フェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」や「Slush Tokyo」にも出展し、事業検証を実施。
今年度は、2月15日~16日にオンラインで開催される「TOAワールド・ショーケース東京2021」にて、新たな「未来のカデン」の事業アイデアをお披露目予定。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「New Business Meetup~新規事業開発 4つの壁の乗り越え方~」
イベントページはこちら

Share

  • Facebook
  • Twitter
KEEP IN TOUCH!
プロジェクトの最新情報はSNSで発信しています。ぜひフォローしてください。