Dec 3, 2020

AiryTail(エアリーテイル)が切り拓く地球家電の可能性:カタパリスト達の現在地〈3・4期生編〉Vol.4

Game Changer Catapult

AiryTail(エアリーテイル)が切り拓く地球家電の可能性:カタパリスト達の現在地〈3・4期生編〉Vol.4

Written by AiryTail チーム

バイクライダーがマスクのように身に着けることで、周囲の空気も清浄化する「AiryTail(エアリーテイル)」が、2020年度の「Red Dot Design Award(レッド・ドット・デザイン賞)」を受賞した。今回は、プロジェクトメンバーである山中香苗、加藤優貴、迫健太郎の3名に受賞時の感想や、開発までの経緯、今後の展望について語ってもらった。

img_AiryTail__01.jpg左:加藤優貴、中央:山中香苗、右:迫健太郎

明確なコンセプトと情熱で勝負したビジネスコンテスト

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山中:こんにちは。AiryTailのプロジェクトリーダーの山中です。AiryTailとは、パナソニックの新規事業創出活動Game Changer Catapult(以下、GCカタパルト)の第四期ビジネスコンテストで最終選考を突破し、現在事業化を目指しているパーソナル空気清浄マスクのアイデアです。私は以前から環境問題に興味があり、担当業務とは別に、環境問題への対応に特化した家電の企画を考えていました。そんなある日、GCカタパルトが主催するビジネスコンテストで新規事業アイデアを募集していることを知り、自身のアイデアを具現化するためにコンテストに応募することを決めたのです。
実際にはまだ具体的な商品のイメージやターゲットが無かったのですが、地球という大きな住まいのためのカデンである「地球家電」、大気汚染に着目した周りの空気も同時に浄化するポータブル空清というコンセプトのみでエントリーしたところ、幸運なことに書類選考を通過。そこから、エアコン商品化の同僚で信頼している加藤に「是非一緒にやってほしい!」と声をかけ、アイデアのブラッシュアップをはじめました。

加藤:私自身、GCカタパルトに興味があって、いつかはチャレンジしてみたいなと漠然と考えていたところだったので、お声掛けいただいたときはうれしかったですね。地球家電というコンセプトや山中の想いにも共感し、参加させていただくことにしました。

:私は、当時は家電部門でデザイナーをしており、「審査会に向けてプロダクトのデザインをお願いしたい」と人伝でオファーを受け、加藤と同じく山中の熱意に心打たれ、昨年の年末から参加しました。主にデザイン面で、プロダクトデザインやブランディングをサポートしています。今回受賞した「レッド・ドット・デザイン賞」への応募も私から提案しました。

「レッド・ドット・デザイン賞」の受賞を経て

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:毎年アメリカ テキサス州オースティンで開催されるサウスバイサウスウェスト(SXSW)への出展に向け、アイデアをみんなで固めていた中、新型コロナウイルスの影響でイベント自体が中止になってしまいました。グローバルでの受容性を検証するための代替案として、自身も過去に応募・受賞経験のあった国際的デザイン賞の「レッド・ドット・デザイン賞」への挑戦を思いつきました。受賞すれば、世界に向けてこのアイデアを発信できると考え、エントリーの締め切り1週間前でしたが思い切ってメンバーに提案しました。

山中:迫から話を聞いたときは、とてもワクワクしました。あくまで直感ではありましたが不思議と「いけるかもしれない」という自信もありました。

加藤:私は、びっくりしましたね。世界的に権威のある賞ですし、現実味も感じられず、「ダメでもともと」くらいの気持ちで挑みました。

:数ある賞の中で「レッド・ドット・デザイン賞」を選んだのは、このアワードが社会課題に根差した商品やアイデアを高く評価する傾向にあるからです。当初の目的とは異なりますが、AiryTailはコロナ禍において空気に敏感になっている世相ともマッチしているのではないか、という勝算もありました。エントリーするカテゴリーは、体に装着する機器ということでウェアラブルデバイス部門を当初想定していましたが、AiryTailのコンセプトである地球家電という視点を大事にしたいと考え、最終的にはサスティナビリティ部門で挑みました。数日間で集中して、地球家電の先進性や必要性を前面に訴求したプレゼンテーションシートを制作し、応募しました。

山中:迫の戦略が功を奏して受賞でき、本当にうれしかったですね。世界的に評価されたことで、プロジェクトに一筋の光明が見え、チーム内のモチベーションも向上。長い間かけて考え続けてきた地球家電が世界に必要とされていることも再認識できました。

地球家電という新しい文化をつくる

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山中:従来の家電は、エコや省エネなどの機能により環境への影響をマイナスからゼロに近づけるものだったのに対し、地球家電は、ユーザーが快適性を損なうことなく、使いながら同時に地球環境にプラスになる積極的な機能を有することが特徴です。ぜひともこの地球家電で新しい文化を作りたいと思っています。

加藤:私がチームに入り、アイデアをブラッシュアップしていく過程でも、あくまで山中が当初に考えた「地球家電」という事業コンセプトだけは見失わないようにしました。

山中:プレゼンでもこのコンセプトを伝えること、地球家電の必要性に重点を置きました。無事審査を通った時には、自分の考えに上層部が共感してくれたという感慨が湧き、これが何より一番うれしかったですね。

加藤:できる限りのことをしたので達成感はありました。社会課題の解決を目指す「地球家電」という新しいコンセプトが審査会でも高く評価されたことで、自分たちの意思と会社の方向性が一致していることを確信できましたね。

AiryTailに込められた想い

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山中:製品アイデアは形になりつつありましたが、ターゲットを決め切れずにいました。その時、加藤が、地球環境への貢献という大きなテーマを具体的な需要へと落とし込むことが必要だと考え方を整理してくれて、そこから「日々汚い空気に苦しめられている」という強いペインを持つバイク天国ベトナムのバイクライダーを対象にすると決めたのが、2019年8月ごろでした。その後、製品デザインと仕組みを考えていくうえで、デザイナーの力が必要となり、迫に声をかけました。

:最初にプロジェクトの概要を聞き、単純に面白そうだと思いました。商品コンセプトも明確で、これからの世の中に必要とされる事業だと感じたので、すぐに参加を決めました。

山中:迫には、非常に短納期の無理なお願いにも関わらず、快く引き受けてくれて本当に感謝しています。どんな難題もRPG(ロールプレイングゲーム)をクリアするように楽しみながらやるという姿勢には感銘を受け、見習うようにしています。何よりAiryTailという素晴らしい名前もつけてくれました。

:マスクを通り抜けて浄化された空気が風になびくマフラーや尻尾のように感じたことから、そう名付けました。結果、英語圏に向けて語呂もよく、FairyTailと表記も似ているため耳馴染みのあるネーミングになったと思います。

加藤:色々な名称を提案してもらいましたが、商標登録の問題で使用できないものもありました。AiryTailは、製品の機能性や特徴をよく表しており、とても気に入っています。

山中:現在、ユーザーの声を聴きながら形状も更新中ですが、加藤、迫だけでなく、一緒に走ってくれたメンバー達やご指導いただいた方々、ご支援くださった方々と共に作り上げてきたもので、関わってくださってきた全ての方に本当に感謝しています。

事業化実現への壁

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山中:AiryTailは、私が所属しているエアコン事業部での事業化を目指しており、現在は事業の収益性や海外での需要、形状、スペックなどについて精査をしています。海外からの情報収集や既存のやり方の「壁」など、実現への難しさを痛感する日々ですね。

加藤:コロナ禍のため、現地の視察やリサーチがかなわない中でしたが、オンラインを活用したリサーチやインタビューで多くのベトナム人の方に貴重なご意見を伺うことができました。しかし、やはり現地に足を運び、生の声をアイデアに反映させることで、もっと完成度を高めていきたいというのが正直なところです。

:高い壁ではありますが、メンバー全員が課題を理解し、解決するために取り組んでいます。決して悲観的にならず、社外のリソースも借りながら柔軟に対応していければと思います。

トライすることの重要性

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山中:今後の展望は、一日も早くPanasonicのロゴの入った地球家電、まずはその第一弾としてAiryTailを社会にお届けすることです。実現には多くの困難もありますが、自分のアイデアを具現化するのに、ビジネスコンテストは絶好の機会だと思います。色々な人と出会え、刺激をもらえますし多くの体験と学びを得ることができます。実現したいアイデアがある人は、ぜひチャレンジしてほしいですね。

加藤:カタパルトの研修プログラムでは、一からアイデアを生み出していく新規事業ならではの発想方法や、短い時間で的確に伝えるプレゼン手法など、幅広いスキルを実践の中で学べました。本業とは一味違う経験を通し、短期間で効果的にスキルアップできたと実感しています。

:コンテストの参加に必要なものは、明確なコンセプトとそれを実現したいという想いです。私自身がそうだったように、熱量は必ず人に伝わり、仲間が集まります。モチベーションを維持し続けることが大切だと、改めて学ばせてもらいました。

関連記事:プロジェクト紹介はこちら
     「あなたとあなたの周りに、キレイな空気を ~AiryTailが目指すビジョン」はこちら


AiryTail

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空気を浄化し、バイクライダーとその周囲にキレイな空気を届けるパーソナル空気清浄マスク。
空気中のPM2.5や花粉、粉塵などを2種類のフィルターが効率的に捕らえ、きれいな空気を使用者と周囲へ放出することで、周辺環境にもより良い影響を与える「地球家電」。世界3大デザイン賞の1つで、60年以上の歴史をもつドイツの「レッド・ドット・デザイン賞」を2020年に受賞。

カタパリストとは
GCカタパルト主催の社内ビジネスコンテストに参加経験者の総称。

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