Jan 29, 2021

イノベーションの根幹となる「食」のポテンシャルと新たな価値創造―Smart Kitchen Summit JAPAN 2020で感じたこと―

Game Changer Catapult

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イノベーションの根幹となる「食」のポテンシャルと新たな価値創造―Smart Kitchen Summit JAPAN 2020で感じたこと―

渡邉 怜美(アプライアンス社 日本地域コンシューマーマーケティング部門 商品センター ソリューション・空質)

「食べる」ということは「生きる」という事と言っても過言ではないくらい、我々人間にとって重要なテーマです。重要だからこそ、熱い想いをもってその領域に挑むイノベーター達が沢山います。今回は、パナソニックで普段システムキッチンの商材に携わり、本業の傍ら「食べる」ことについての新規事業にも取り組んでいる渡邉怜美が、Smart Kitchen Summit JAPAN(以下SKSJ)2020でのエッセンス、感じたことについてレポートします。

そもそもSKSJとは?というと、『食&料理×サイエンス・テクノロジー』をテーマに2017年にスタートしたグローバルカンファレンス、共創の場です。今年で4回目となるSKSJ2020は、12月17日から19日にかけて3日間開催されました。イベント概要はこちら

「みんなの英知を集める社会実装のフェーズ」
オープニングでシグマクシスの田中さんがおっしゃっていた言葉がとても印象的でした。私が参加したDAY3では、主に「社会実装」がテーマになって議論が進んでいきました。

―これからの世の中を変えていくには、コラボレーションが不可欠!?共創型事業開発MISTA、官民協業・省庁横断のフードテックブーストモデル、SUNDRED社の新産業アクセラレータから感じたことー

最近、食の分野を問わず、オープンイノベーション、共創といったモデルに関心が集まり、様々な取り組みがなされています。今回のSKSJでも、様々な共創モデルの事例が紹介されていました。
例えば、サンフランシスコに拠点をもつジボダン社MISTAのエコシステム。一般的なオープンイノベーションの場合、主に大企業が自社内でのイノベーションを促進させるために、意図的に外部のリソース、人や知的財産などを取り入れていきます。しかしこれだと、最終的に大企業側に裁量権があり、結局イノベーションが生まれにくく、外部の人材とのコミュニケーションコストが増大して、むしろ推進スピードの失速に繋がる場合があります。

一方、MISTAの場合は、そういった異なる風土や文化をもつ大企業とベンチャーの橋渡しとして連携を促し、様々な企業を巻き込みながらうまくファシリテートしていくことができます。時には大企業の経営幹部に対し、正しいマインドセットを促すこともある。決まったテンプレートのようなアクセラレーションプログラムではなく、それぞれの会社に寄り添い、ニーズを深堀したうえで、最適解を見つけるエコシステムがMISTAなのです。

また農林水産省の渡辺さんら3名から発信のあった官民協業のフードテック共創モデルについては、政府や組織特有の今までやってきたことのないものに対する抵抗感を払拭するように、若手からチームを発足し、他の省庁や企業を巻き込みながら改革を推進しています。
SUNDRED社では、1社だけでは実現できない、こんな社会を作りたい、と思うイントレプレナーを中心に、映画を作っていくように様々な企業、人が関わり、新しい産業を生み出す独自のエコシステムが構築されています。なんと、100の新しい産業を共創することを目的に設立された会社で、既に10を超える産業を生み出しています。

SUNDRED社の凄い所は、単なるプラットフォームの提供ではなく、時には投資をしたり、対話をしたり、その時々に必要なものを提供しながら、アカデミアの研究とプロジェクトの実践を通じて産業創出を推進しているところです。最近では、コミュニティという形でシステム化してきているとのこと。
このようにフードテック業界において共創モデルが盛り上がる要因の1つに、まさしく「食」がテーマだから、ということがあると思います。食、というのはこの世に無関係な人が存在しない、全ての人が消費者目線になることのできるテーマです。多様な人材が共創することで、食のイノベーションは今後益々加速していくでしょう。

―Ready to go。既に知識は蓄積されているー

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WIRED JAPANの松島さん、さかなファームの原さん、弊社の真鍋などのディスカッションを経て得られた示唆が「Ready to go」です。
松島さんからは過去の食にまつわる歴史や知見を紹介いただきました。アカデミックや周辺領域を含めて、今までたくさんの知見を得ているので、あとは組み合わせて錬金していくフェーズである、というお話がありました。

原さんからは、陸上養殖についてのお話がありました。既存の陸上養殖を推進している組織を色々みていくと、みんな同じ課題(餌問題、物流問題など)に行きついており、それぞれが思考錯誤してノウハウをためている。それらの課題感や解決策をみんなで共有し「おいしい魚づくり」をしていこう、というお話でした。

また、弊社真鍋からは、ビジネスを回し顧客と対面しながらピボットしていく、事業開発の知見がたまってきた、という話もありました。クックパッドの住さんからは、大企業における新規事業の推進にあたって、失敗するパターンがみえてきたというお話もあった。社内での報告ルールに則って、社員が忖度をしながら進める、役員の言う通りにしようとすると多くの場合失敗してしまうそうです。

当たり前ですが、日本だけでも数多くの人たちが様々なチャレンジをして日々奮闘しています。有限な時間を生き抜き、よりよい世の中へ、食産業の盛り上がりを、と思うのであれば、そうやって積み重ねてきた知見を今一度見直し、走り出していく姿勢が重要と考えています。Ready to go。もう私たちはいつでも新しいことができる環境にいるのです。

―未来を描くことの重要性―

SKSJ2020のセッションのうち、いい意味で私が最も衝撃を受けたのがOPEN MEALSの榊さんの発表でした。FOOD×TECH×ARTの観点から、現在15の未来食のビジョンを構想していて、そのうち5つの未来にまつわる提案でした。例えばスーパーマーケット×アートミュージアムという着想からはじまった感性を刺激するスーパーマーケットの例。
普段よくある食材は自動配送等で満たされる未来において、必要なのは「新たな食との出会い」。誰もが気軽に新しい食が発見できる、スーパーマーケットの新しい在り方の提案でした。構想図をみているだけだと、近未来的で本当にこんな現実が訪れるのか?という気持ちになりますが、榊さんの話を聞いていると、提案に至るまでの背景に納得感があり、榊さんの中ではリアリティをもって想像されていて、その実現のためにどんな仲間が必要かも明確でした。新しい世の中を作っていくというのは、こういうことなのか、と、社会に変革を起こすリーダーのあるべき姿の一例をみたように思います。

Picture of chaptar3-image1_未来を描くことの重要性
Picture of chaptar3-image2_未来を描くことの重要性

また弊社の深田からも、新しい価値を生み出すのに一番大切なのは、思いが大切で、とにかく言い訳せずに実行する力が求められている、という話もありました。先述した共創の場、はもちろん大切ですが、何より重要なのは一人一人の思い。パナソニックの創業者である松下幸之助も「志あるところ、老いも若きも道は必ず開ける」という名言を残しています。そしてその志を夢物語にせず、リアリティをもって考え、共感してくれる仲間をみつけ、とにかく動いていれば、きっと未来が変わっていくはずです。

今回のSKSJ2020では、新しい食の可能性を求めてイノベーションを起こす社会実装の事例や、未来への示唆を数多く得ることが出来ました。
一般的に、なにか新しい事を始めるのはとてもエネルギーが必要で、その過程において困難を避けて通ることは難しいものです。強いWillがないと新規事業は出来ません。なぜなら幾度となく周りから否定をされることがあるからです。

しかし、元から強いWillが存在しているのではなく、壁にぶつかる度に共に寄り添ってくれる仲間がいて、また頑張ることが出来、それを繰り返すうちにWillが強くなっていくのではないでしょうか。そしてそんな、切磋琢磨出来る仲間やコミュニティがSKSJにはあるように感じました。私も食に関する事業に携わっている身として今後も仲間と共に走っていこうと思います。

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