Aug 20, 2020

幸せの形は無限大──全国のオフィスに幸せを届ける「totteMEAL」の軌跡

Game Changer Catapult

幸せの形は無限大──全国のオフィスに幸せを届ける「totteMEAL」の軌跡

GCカタパルト事務局

オフィス内で気軽にお菓子や軽食を購入できるBOX置き型販売サービス「totteMEAL(トッテミール)」の事業開発リーダーを務めるGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)の井上 貴之。事業化目前に至るまでの変遷と井上の姿勢を紹介します。

全国どこでもオフィスにBOX置き型販売サービスで幸せを届けたい

Picture of chaptar1-image_全国どこでもオフィスにBOX置き型販売サービスで幸せを届けたい

昨今、仕事中にわざわざ外出しなくてもオフィスでお菓子や軽食を購入できる、無人販売サービスが増えています。しかしそういったサービスは、これまで都市部に限られていました。

その状況を変えようとしているのが、GCカタパルトの新規事業アイディア、BOX置き型販売サービスの「totteMEAL」です。totteMEALは、導入企業の従業員にサポーター役をお願いし、宅配便でお届けした商品を受け取ってもらう形のサービスです。宅配が受け取れる環境であれば、全国で利用できます。商品の購入は、バーコードを専用のアプリで読み取るだけです。


井上 「多くの無人販売サービスは、配送スタッフが料金回収と商品補充のために定期的にオフィスを訪れます。ただこの形は、配送効率の良い都市部でしか展開できません。しかし、地方でも社内で手軽にお菓子や軽食を購入したいというニーズはあるんです。

totteMEALを導入してもらうと、ちょっとした気分転換やご褒美に、オフィスで手軽にお菓子・軽食が食べられるようになります。そんな幸せなオフィスを日本全国にたくさん広げていくのが、totteMEALの目的です」

totteMEALの事業化を進めているのは、井上と技術開発スタッフの2名。井上は、技術開発以外のすべての業務を担います。社内での企画や報告はもちろん、営業や導入説明、カスタマーサポート、さらには商品の買い付けや発送作業までこなします。


井上 「いわゆる大企業では、ある程度区切られた自分の業務範囲内で、責任を持って成果を出すということが普通です。けれどもtotteMEALは、社内におけるベンチャーのような活動なので、自分の範囲とか分野にこだわっていたら何もできません。だからこそ、"なんでもやる"が私の役割といえます」

実はtotteMEALはもともと、オフィスビル街で働く「ランチ難民」を救いたいという想いから着想されたサービスです。しかしさまざまな経緯を経て、現在は全国どこでもオフィスで気軽にお菓子や軽食を買えるというサービスを展開しています。

お客様の気持ちを考えたからこそたどりついた場所

Picture of chaptar2-image_お客様の気持ちを考えたからこそたどりついた場所

totteMEALのアイディアが生まれたのが2016年。翌年2017年に事業化に向けた活動がスタートしますが、顧客のどのような課題を解決するか、どのような価値を提供するかについては、紆余曲折がありました。


井上 「当初は、オフィスビルで働く人にヘルシー志向のお弁当を届けることを考えました。しかし、実証実験でお客様に実際に商品を購入いただいくと、購入がないわけではないのですが、そこまでヘルシーニーズは高くなかったのです。

そこでヘルシー志向を問わず様々なお弁当やパンを取り扱うことを考えましたが、賞味期限の短い食品は管理が難しい。しかもお客様一人ひとりのニーズを満たすことができるだけの種類を揃えようとすると、かなりのスペース確保が必要で、断念しました」

そうして1~2年ほど、いろいろな商品を取り扱えるように開発を進めていた井上ですが、お客様はぜんぜん増えませんでした。


井上 「考えれば考えるほど、売り上げが取れるか取れないかという売り手の視点に陥っていました。そこで一度原点に立ち戻り、オフィスに気軽に置いてもらえて、みんなが満足してくれるものを改めて考えたときに、『お客様が本当に欲しいと思っているもの』を売るべきだと思いなおしました」

totteMEALは2020年7月時点で、社内4箇所、社外20社ほどで導入が進んでいます。また、実際のお客様の声を受け、新しい動きとして、2020年2月ごろから、お菓子のバラ売り対応を始めました。


井上 「実は、バラ売りのアイディアは当初からあったのですが、在庫管理の難しさや手間を考え実施していませんでした。でも、他社はやっていないことだったので、自分たちが実現できたらおもしろいなと。

バラ売りを始めてみると、1つ200円の商品は高いから買わないと言われていたお客様が、バラ売り商品だとトータル200円以上買ってくれたりするんです。つまり、値段が問題だったのではなく、量が多すぎたり、いろいろなお菓子を楽しみたいという思いがそこには隠されていたのです」

お客様の購入履歴を参考にしながら、サービスをさらに改良し、事業化に向けて進むtotteMEAL。しかし2020年には、大きな影響を受ける世界的な出来事がありました。

アフターコロナの時代に見る大きな可能性

Picture of chaptar3-image_アフターコロナの時代に見る大きな可能性

2020年、世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大し、日本では4~5月に緊急事態宣言が発動され、オフィスに出社する人が激減しました。


井上 「緊急事態宣言下の約2ヶ月間は、オフィスに出社する人がいなかったため、totteMEALは全く利用されませんでした。しかしアフターコロナの時代は、totteMEALを利用したいと思う人が増えると考えています」

なぜ追い風なのでしょうか。それは、今後、1つの大きなオフィスでみんなが仕事をするという形ではなく、たとえばサテライトオフィスにプロジェクトごとに勤務するなど、少人数で仕事をする形が増えると予想されるからです。


井上 「totteMEALは、お客様の近くで、お客様のニーズに沿ったものだけを販売するという、マイクロマーケットを狙ったビジネスモデルです。そのため、少人数のオフィスになるほど、お客様のニーズを把握しやすくなり、お客様が欲しいと思う商品の提供が容易になります」

またtotteMEALには、「ローリングストック」としての役割も期待されています。ローリングストックとは、災害対策の備蓄方法の一種で、常日頃食べるものを多めに買っておき、普段から食べながら、非常事態には非常食にもなるという考え方です。


井上 「従来はまだ、オフィスで喫食するという文化が浸透していないところもたくさんありましたが、自然災害の増加、そして新型コロナウイルスの影響で気軽に外食に行けない今、お菓子から軽食まで取り揃えているtotteMEALが注目されはじめています」

さらに時代に合わせ、企業の福利厚生の定義も変化しています。そのなかで、totteMEALを福利厚生として導入したいという企業からの声も増えてきています。


井上 「totteMEALはもともと法人間契約が不要で、会社を介さずに申し込みが可能なサービスとして開発しました。しかし、福利厚生としての導入を望む企業からの声にもお応えして、会社としての導入もできるような形にしました。会社でも個人でもどちらにも対応できる、これもtotteMEALの強みです。

totteMEALの事業化に取り組むなかで、正直、先が見えない、無駄なことをしているのではないかという時期もありました。しかし、そういう時期があったがゆえに、できることを限定せずに開発をしてきて、まわりまわってそれが生きて、臨機応変な対応ができているのだと思います」

原動力は制約条件があることを楽しむ気持ち

Picture of chaptar4-image_原動力は制約条件があることを楽しむ気持ち

totteMEALのゴールは、オフィス向けにお菓子、軽食を販売することにとどまりません。totteMEALを、さまざまなお客様に合わせた価値が提供できるプラットフォームにしたいというのが、目標です。


井上 「食べ物だけでなく、たとえば文房具やその他消耗品など、オフィスでニーズのある商品は他にもあります。また、バラ売りができるとことを考えたときに、オフィスだけでなく、工場向けにオイルやネジなどを提供することも考えられ、実際、そういったご要望もすでにあります。そしてこれらはすべて、今ご提供しているアプリで対応可能です」

さらに将来を見据えた目標として、井上は、C to Cマーケットとしてのアイディアも持っています。


井上 「totteMEALは、C to Cでの商品販売、あるいはシェアプラットフォームとしても使えます。単なる販売というより、いろんな人がいろんなものをその場でやりとりできるプラットフォームとして、人と人のつながりをサポートできる場所として、大きくしていきたいです」

そんなtotteMEAL事業化に取り組む井上の原動力は、「新しいことをしたい」という気持ち。そして、それをパナソニックの中で実現することに、楽しさを感じていると井上は言います。


井上 「何か新しいことをしたいとき、独立して社外で事業化するタイプの人もいますが、私はどちらかというと会社をフル活用して事業化を実現したいというタイプです。

ただ、そこにはもちろん制約条件があります。過去には、こんなに制約されるなら、社内ではなく社外に出て取り組んだほうが良いのではないかと思うこともありました。

でも、それでは楽しくないと思ったのです。私は制約条件があるなかでどうやって事業を立ち上げられるかというところに、ある種楽しみを感じているのだと思います」

totteMEALはハードがない、いわゆるサービスビジネスということもあり、これをパナソニックで事業化するというのは、より高いハードルにチャレンジすることを意味します。しかし井上は、そこにも楽しみを見出しています。


井上 「できないことをできるようにする、その積み重ねが楽しい。それが楽しめるからこそ、ここまで続けられています」

そんな井上が取り組んできたtotteMEAL。刻々と変化する時代のなかで、さらなる進化を遂げていくことでしょう。

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