Aug 31, 2021

新規事業への挑戦を続けるカタパリストの熱い想いに迫る ~「未来の定番づくり」パネル対談レポート~

Game Changer Catapult

新規事業への挑戦を続けるカタパリストの熱い想いに迫る ~「未来の定番づくり」パネル対談レポート~

Written by Game Changer Catapult 事務局

未来の「カデン」を生み出すためのパナソニックの新規事業創出活動Game Changer Catapult(以下、GCカタパルト)が主催するパネルディスカッション形式のオンラインイベント「BeeEdge傘下のカタパリストに学ぶ ~未来の定番づくりとは~」が7月28日に開催されました。パナソニック社員向けに行われたこのイベントには、新規事業の経験豊富な「カタパリスト」のパネリストとして、浦はつみ氏(ミツバチプロダクツ株式会社 代表取締役社長)と水野時枝氏(ギフモ株式会社)が登壇。「未来の定番づくりとは」というテーマでパネルディスカッションを行いました。
今回の記事では、新規事業への挑戦を続けるカタパリストの諦めない姿勢やこれまでの経緯など、パネルディスカッションの内容をお伝えします。

カタパリストとは
GCカタパルト主催の社内ビジネスコンテストに参加経験者の総称。

<パネリスト>
浦はつみ(ミツバチプロダクツ株式会社 代表取締役社長)
1997年に九州松下電器株式会社入社。2002年に松下電器株式会社へ転籍。2005年からは国内の家電量販法人営業部門へ異動し、初の女性営業として調理商品を担当した。その後GCカタパルトのビジネスコンテスト参加を経て、2017年からチョコレートドリンク事業を推進し、2018年9月ミツバチプロダクツ株式会社を設立。チョコレートドリンクマシン「INFINI MIX(インフィニミックス)」を手掛ける。

水野時枝(ギフモ株式会社)
1983年に松下電器株式会社入社。炊飯器事業部や洗濯機事業部を経て、2016年にGCカタパルトのビジネスコンテストに1期生として参加した。2017年には社内の有志とケア家電サークル「Team Ohana(チーム オハナ)」立ち上げ「ケア家電」の実現に向けて活動。嚥下障害や摂食障害の方をサポートする調理器「DeliSofter(デリソフター)」プロジェクトのリーダー。

<モデレーター>
向奥裕基(GCカタパルト事務局)
2016年にパナソニック株式会社入社。コールドチェーン事業部にて冷蔵ショーケースの設計開発をする傍ら、2017年にGCカタパルトのビジネスコンテストに2期生として参加。2019年からGCカタパルトに移り、ビジネスデザイナーとして、新規事業創出・社内起業家育成・チャレンジする風土作りに挑戦中。

新規事業アイデアのきっかけや、事業が加速したポイントを語る

定時後の開催となったパネルディスカッションですが、100人以上の社員たちが参加してスタート。パネリストのトークを真剣に聞く姿から、新規事業への関心の高まりが垣間見え、パナソニックの中で新規事業創出活動に対する認知が向上しているように感じます。今回のゲストはGCカタパルトのビジネスコンテストに参加した「BeeEdge傘下のカタパリスト」ということもあり、パネリストの経歴と事業紹介に加えて、大企業発スタートアップへの出資・支援を実施している「株式会社BeeEdge」についても説明があり、その後パネルディスカッションが開始。まずは新規事業のきっかけについてゲストの2人に質問します。

1_Picture_of_BeeEdge_talk_event.jpgプロジェクトの経緯について紹介する浦氏。写真左はチョコレートドリンクマシン「INFINI MIX(インフィニミックス)」。

向奥:では最初に起案の経緯からお聞きします。新規事業に取り組むための「課題」はどうやって見つけたのでしょうか。

浦:経緯としては、私はパナソニックで「キッチンポケット(現EATPICK)」という食に関するサービスを提案したことを通じて食の大切さを実感した、という部分が大きいですね。それに食というテーマには以前から関心があり、発酵食品に注目して最初は甘酒の事業を検討していました。その後は検討を重ね、同じ発酵食品であるカカオを使った事業に方向転換し、チョコレートドリンクマシンのプロジェクトを進行しています。

水野:きっかけは祖母の在宅介護からです。祖母からは「生きることは食べること」「家庭の味を食べ続けられる喜び」について聞かされていました。プロジェクトのメンバーの一人も在宅介護を通じて家族の嚥下障害を支えてきた経験を持っており、そうした課題に対して「いっちょやったろか」という想いで起案したのがスタートです。苦しい時期もありましたが、アイデアに伴走してくれる仲間をパナソニック社内で探しました。それがケア家電サークル「Team Ohana」誕生につながります。

向奥:なるほど。周囲を巻き込みながら進める中、アイデアを磨き上げる上で、事業を加速させるきっかけとなったポイントはありますか。

浦:まだ磨き上げている途中ですが、このマシンには愛情と力と命を注いできました。多くのメンバーがこのマシンを磨き上げてきた結果です。それから個人的には優れた製品である「モノ」だけではなく、そこから生まれる文化など「コト」を生み出すことを目指しています。

水野:1番は嚥下障害についてリハビリテーションの先生にお話を聞いた時の「やっとこういう人たちが現れた」という言葉です。その言葉が火をつけてくれました。それ以来、専門家の先生を巻き込んで介護施設での調査を進めました。人を巻き込んで進むことで事業が加速するというやり方ですね。

向奥:行動することで、そうした先生にも出会うことができたと。

水野:そうですね。私は「運とご縁とタイミング」を大事にしています。それにパナソニックではみんなで努力すれば報われるということを学びました。パナソニックで学べたからこそ、今の自分がいるのだと思います。


新規事業をやりとげる熱い想いと原動力、切り替えて前へ進む力とは

新規事業に挑戦した経緯についての質問では、人を巻き込んでアイデアのブラッシュアップを進めたり、ひたむきにひとつのマシンと向き合ってきたゲストの経験が語られました。続いては、多くの壁を乗り越える原動力やモチベーションを維持する方法についてテーマが移ります。

2_Picture_of_BeeEdge_talk_event.jpg新規事業の壁や困難を乗り越える原動力について語る水野氏。

向奥:新規事業は壁も多いと思いますが、困難を乗り越える原動力とは何ですか?

水野:私はSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)でインタビューを受けた時に「必ず待っているお客様がいる。絶対に事業化します」と宣言しました。そしてケア家電サークル「Team Ohana」のメンバーや専門家の方々、パナソニックのみんなに救われて歩んできました。モチベーションにしても、やはり私たちと同じ悩みを抱えているお客様がいて、ダイレクトにつながっているから維持できているのだと思います。パナソニックで教わったこと、ギフモでお客様から新たに教わったこと、それらをお客様にお返しして、その製品をお客様に選んでいただけることが最大の原動力ですね。

浦:「やりきらないと、パナソニックに入った意味がない」という想いはありますね。つまずくこともありますが、続けることで「仲間も増えてくる」と思っています。また私はGCカタパルトのビジネスコンテストでは甘酒のアイデアを進めていました。ですが展示会で材料の問題に直面して「全世界での展開は難しい」とくじけそうになったこともあります。それでも発想を変えてチョコレートという発酵食品の存在に気付くことができました。「気付くことで進む」この連鎖でモチベーションもアップしています。

向奥:切り替えながら前を向いて走って行く、というのはすごいですね。

浦:もちろん電池切れにはなります。ただ電池切れになっても、自分で起きないといけない、というのがパナソニック時代とは違いますね。これまでは「誰かのせい」にできたけれども、今は自分の責任がある。「人生一度だからやらなきゃダメだ」とも思いますし、他人のせいにしていると楽だけれども、それでは私の人生は満足できないと感じているので、この道を選択しています。

大切なのは「情熱の伝播」お互いを尊重することで光が見えてくる

お客様の目線で同じ悩みを共有したり、くじけそうな時も発想を変えて進んでいくというカタパリスト2人の姿勢からは、新規事業挑戦に対する熱い想いがダイレクトに伝わってきます。課題を解決したいという信念や、自分の責任で進むと語る2人の言葉に、頷きながら聞き入る参加者の姿も見られました。後半に入るとパネルディスカッションを視聴している参加者からの質問も寄せられます。

向奥:それではここで、参加者の方々から届いた質問も取り上げていきたいと思います。まずは「起業して良かったエピソード」について教えていただけますか。

水野:ダイレクトにエンドユーザーとつながったことですね。多くのお手紙をいただき、それが財産であり誇りになっています。そして1人のお客様からパナソニックの販売店ともつながり「店頭にDelisofterを展示してもらい、購入希望者には講習も実施してもらう」という嬉しい連鎖まで起きています。

向奥:続いては「2人にとってゴールはどこですか」という質問が届いています。

浦:新規事業の場合は事業価値を見せることですね。そしてみなさんに「この市場は面白いのでは」という気付きを与えることが今の目標です。

水野:Delisofterのような家電を必要としているエンドユーザーに寄り添うアイデアはまだまだたくさんある。ケア家電事業を確立するまでは夢を諦めません。

向奥:では最後に「未来の定番づくり」を考えている本日の参加者たちにエールをお願いします。

浦:パナソニックの中には仲間がいます。流通、製造、研究、プロモーションができる人たちがいます。今あるものを見直しながら、お互いの仕事を尊重することで、何かの光が見えてくると思います。課題があって先に進まない時、視点を変えながらやってみる。そして大切なのは「情熱の伝播」。仲間と甘え合うのと尊重するのは違うので、そこを考えてみてほしいですね。私たちのプロジェクトも頑張っているので、みなさんも「私も頑張れる!」と考えてみてください。

水野:大きく分けて3つあります。「継続すること」「共感」「コミュニティ」これを行動につなげていくことですね。必ず道は開けますし、共感してくれる人がいます。自分の道を走っていけばいいと思います。

焦らず進むこと、そして「やりきるんだ」という想いを大事に

パネルディスカッションの締め括りは、未来のカタパリストたちへのエールでした。言葉通りにゲストから熱意が伝播するようなメッセージが贈られ、参加者たちのモチベーションアップにつながる機会となりました。最後はGCカタパルトでお馴染みの「C」のポーズで記念撮影。ここでメインイベントのパネルディスカッションが終了し、ゲストへの質疑応答に移ります。

3_Picture_of_BeeEdge_talk_event.jpgGCカタパルトでお馴染みの「C」のポーズで記念撮影する参加者たち。

参加者:情熱の源はなんですか。

浦:松下幸之助も「人のためになるサービスを作りなさい」という言葉を遺しています。私もそれができるまで頑張っています。ただ、すぐに燃え上がる人もいれば、熱量を年単位で積み重ねていく人もいる。無理に自分に火をつけるのではなく、焦らず進むことが大事。仲間、ファン、情熱を作るにはそれぞれ時間が必要です。

水野:これまで解決できていない課題なので、情熱しかありません。「やりきるんだ」という想いが大事です。

参加者:「運とご縁とタイミング」という言葉があったが、運をつかむコツなどはありますか。

水野:あらゆる専門家に自分からアタックすることが重要です。私はその専門家の先生と高みを目指していますし、必ずお客様を幸せにする揺るぎない信念があります。また新規事業に挑戦すると、これから乗り越えていく波と坂があると思いますが、坂は必ず平らになります。それが道です。

質疑応答が始まると、これまで聞いていた参加者からは多くの質問が投稿され、他にも「熱い想いを聞けて参考になりました。私も情熱のタスキを受け取ってがんばろうと思います」「社内の軋轢程度でへこたれている自分に勇気をいただいた」などの共感するコメントが多く寄せられました。やはり新規事業の経験を持つ先輩の生の声や体験を直接聞くことができる機会ということで、参加者のモチベーションは高い印象ですが、パネリストのトークを聞いて、さらに前向きに進もうとする姿が見えました。まさにカタパリストの情熱が伝播する熱量の高いイベントとなったと思います。


株式会社BeeEdgeとは
パナソニック発の技術・アイデアで次世代をけん引する事業を育成・創出することを目的として2018年に設立された事業会社。事業スタートアップへの出資と支援を実施している。原則としてパナソニック社内で事業化しなかったテーマを扱う。四半期に一度のアイデアコンタクト会議でアイデアのブラッシュアップなどを通じて、事業会社化を検討していく。

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