Jul 10, 2020

新規事業創出のススメ

Game Changer Catapult

新規事業創出のススメ

Game Changer Catapult(GCカタパルト)の活動を通じて様々な立場の方と話をしていると、世間では新規事業創出への関心が着実に高まり、さらに昨今の社会情勢がそれを促進させていると感じます。今回は、これまで数多くの新規事業の立ち上げに携わり、現在も非連続な新規事業創出をミッションとするパナソニック アプライアンス社事業開発センターで所長を務める中島 宏史氏に、新規事業創出を行う意義や心構えについて聞きました。

【中島 宏史】
パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター所長。事業構想大学院大学 客員教授。松下電工(現パナソニック)入社後、全社戦略・構造改革などに携わり、株式会社エムアウトで代表取締役社長などを歴任。

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「開拓者」精神が導く新規事業への道

――松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)が社会人としてのキャリアのスタートですが、どのような志で入社を決めたのですか?

入社当時から新規事業がやりたいという思いを持っていたわけではありません。海外志向があったのですが、当時の松下電工は、海外の売上比率が全体の5%程度で、事業拡大の余地がまだまだありました。そこで、自分が「開拓者」になりたいと思い、入社を決めました。

――新規事業に関わったきっかけは

入社後は、海外部門ではなく事業企画部門の配属になりました。担当していた照明事業の世界的な動向について調査する過程で、当時アメリカで行われていた、照明器具を売るのではなく、照明器具を設置することで削減出来た電気代の半分をフィーとして受け取るという非常に斬新なビジネスモデルに触れ、日本でも機器の販売だけでなく、新しい事業を展開するべきという提言をしたのが、新規事業に関わったきっかけです。

その後新規事業への思いが強くなったのは、「失われた10年」と言われる2000年代初頭の頃です。日本企業が成長できなくなった時代で、新しい事業がどんどん生まれる環境にならなければ日本は世界で勝てなくなるという危機感がありました。ただ、当時の自分には新規事業に関するノウハウやスキルが足りず、それを身につけるために新規事業創出に特化した会社に移ることにしました。

事業創出は誰にでもチャンスがある

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――新規事業を成功させるためのポイントは

新規事業では熱意はもちろん大切ですが、その成功確率を高めるには、徹底的な顧客起点と個人に依存し過ぎないことが重要です。シリコンバレーでは、顧客の課題に向き合い、十分に見極めてからプロダクトの開発を行っている企業の成功確率が高いという統計データがあります。まさに今流行りのユーザー・エクスペリエンス(UX)の実践ですね。モノがあふれている時代に消費者に選ばれる商品やサービスを開発するには、UXを常に意識することが重要です。また、スタートアップ企業では、開発やオペレーションに加え、資金調達、法務手続きなど多岐に渡る業務を同時並行で進める必要があり、その全てを社長一人が担うというのは無理があります。そのために属人的な部分を出来る限り無くし、組織として仕組み化することが必要です。

――新規事業に挑戦する醍醐味どういったところでしょうか

今まで世の中に無かったものを創り、それがお客様に受け入れられ、感動して頂ける。それが醍醐味であり、こうした事を繰り返すことが企業そして日本の成長に繋がると思います。新規事業創出の過程においては、最初に想定したことがそのままうまく行くことは非常に稀です。何度もお客様の声を聞いて、その都度チームで軌道修正を行い、全員で壁を乗り越えられた時の喜びはひとしおです。

大企業では、事業全体の中で自身が直接携われる範囲はほんの一部分です。翻って新規事業では、全てを自分自身で考え、決定し、実行します。このプロセスを経験することは非常に有意義です。

――新規事業に挑戦する人にはどの様なマインドセットが必要ですか?

新規事業は、一部の天才しか成功しないというわけではありません。考え方や手法を適切に身につければ、誰にでもチャンスがあります。新たなことへの挑戦は企業の成長にとって必要不可欠です。自分が新しい事業を生み出し、会社の未来をけん引するという大きな志をもって、主体的に取り組むことが大切です。新規事業は既存事業とは異なり、不確実な要素が多く、思わぬところでつまずいたり、周りからいろいろな意見を聞くうちに自分を見失いそうになることもあるかと思います。そんな時は、掲げたビジョンや目標、お客様や社会へのお役立ちを思い出してみてください。山登りと同じで、足元だけを見ていると迷ってしまいますが、顔を上げて頂上を見て歩き続ければ、最初に考えていたルートとは異なっていても、必ずゴールは見えてきます。

自分の可能性を閉ざさずに行動を

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――大きく変化する社会の中で、新規事業を創出する意義は。

変化する時代には、その時代に適した新しい事業やサービスが求められます。リアルとバーチャルが融合する時代、グローバリズムや人々の嗜好も変化していきます。例えば、スポーツ業界ではリアル観戦からリモート観戦、フード業界では外食に代わりテイクアウトや宅配という業態が浸透する機会となり、新規事業に求められる役割はますます大きくなります。これからは、全ての人が新しい事に挑戦する気持ちとスキルを持たなければならない時代になると思います。

――今後新規事業に挑戦する人を増やすには何が必要ですか?

自分の憧れや目標となるスタープレイヤーをどんどん輩出していくことではないしょうか。成功した人のエピソードや情熱を感じて、身近な体験として学ぶことで、「自分にもできる」と前向きに考えるようになります。そして、その意識が周囲に広まることで、全体の底上げにつながります。

――まさにGCカタパルトで実施しているビジネスコンテストは最適な場になりますね。

そうですね。ダイレクトに事業創出の考え方に触れる機会となっています。個人では難しいことでも、チームで取り組むことで経験することが出来、さらにGCカタパルトの関係者や先輩からのメンタリングなどを通じて、知識やノウハウも効率的に吸収できます。

――これから新規事業創出を目指す方へメッセージをお願いします。

新規事業の創出とは、お客様の抱えるお困り事を知り、解決することです。ただ、ヒアリングさえすれば問題点が判明するとは限りません。お客様の問題に関わる社会活動を俯瞰し、何が原因なのかを洞察することにより、課題や解決のためのアイデアを正しく導き出すことができます。企業側からお客様を観るだけではなく、自分がお客様の立場になって企業側を観る、顧客起点で物事をとらえ、考えるクセをつけることがとても大切です。

今の常識がお客様にとって必ずしもベストではないという健全な疑問を投げかけ、「自分が新しい常識を作る」という気概で、まずは最初の一歩を踏み出しましょう!


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