Jul 4, 2022

社内起業経験者が語る。新規事業の魅力と挑戦の意義

Game Changer Catapult

社内起業経験者が語る。新規事業の魅力と挑戦の意義

Written by Game Changer Catapult 事務局

新しい生活文化や心躍る体験を実現する、未来の「カデン」を生み出すための新規事業創出活動をサポートするパナソニックのGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)。

イノベーションや新規事業に挑戦する為の風土醸成活動として、毎月セミナーを開催しており、今回はキリンホールディングス株式会社で社内起業を経験した日置淳平さんを講師に招き「社内起業への挑戦とその魅力」をテーマに語っていただきました。

ゲスト講師:日置 淳平(ひおき じゅんぺい)

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株式会社LeapsIn(リープスイン)代表取締役CEO2008年にキリンビバレッジ株式会社に入社し、食品工業にて生産管理、品質保証を担当する。研究開発部門で新規技術開発と、その工業化に携わり、2018年に「LeapsIn(リープスイン)」を社内で起業し、代表取締役に就任。食品OEMのマッチングサービスを運営し、食品業界が抱える量産化の課題解決に取り組み続けている。

LeapsIn」誕生秘話と込められた想い

日本を代表する綜合飲料メーカー、キリンホールディングス株式会社で社内ベンチャーを立ち上げた日置さんから経験談や想いが聞ける機会とあって、興味を持った方も多かったようです。

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セミナーはまず、日置さんが代表取締役を務める株式会社「LeapsIn」の事業紹介から始まりました。
LeapsIn」は食品をつくりたい企業とつくれる食品工場を繋ぐことで商品の量産化を実現するサービスです。
食品業界には新しく参入する企業が増えてきており、特にフードスタートアップ企業や地域の6次産業などのプレイヤーが注目されています。しかし、現状では食品を大量生産したくても最適な工場が見つからないという課題があります。日置さんは「これは業界全体が抱える問題で、ブラックボックスになっていることが原因である」と指摘し、つくりたい企業側は工場を見つけるために、インターネットで検索したり、展示会に足を運ぶなど地道な手段しか取れない現状があると説明。工場側も閑散期の稼働を確保したい、営業を効率化したいという課題がありました。
そのような「つくりたい企業」と「つくれる工場」をマッチングできるソリューションはないかと考え、立ち上げたのが「LeapsIn」です。具体的なサービス内容は、案件を依頼したい企業と食品工場がサイト上でユーザー登録を行い、案件を依頼したい企業は製造したい食品のカテゴリーなどの概要や数量を入力すると、条件に合ったおすすめの工場がレコメンドされ、うまくマッチングすると商談に進むことができます。
「LeapsIn」のサイトでは、粉末食品から調味料、菓子、介護食まで幅広いジャンルを取り扱っていることが強みで、大手企業だけではなく、ベンチャー企業や地域団体など、多くの企業や自治体の方からの引き合いをいただいています。また別の強みとして、安全・安心な生産管理や量産化のノウハウ、食品工場との幅広いネットワーク、小規模からスピーディーにサプライチェーンを構築できることを挙げています。

案件を依頼したい企業側には量産化に特化したコンサルティングサービスを提供しており、一方工場側にはマッチングサイトの使用料を月額の定額料金で利用してもらうことでマネタイズをしています。
現在では案件を依頼したい企業側と、食品工場側あわせて約4,000社近いユーザー登録があり、食品業界のOEMとしては存在感のあるプラットフォームに成長しました。「近年では新型コロナウイルスの影響でリアルな展示会も無くなるなか、新しい取引先との出会い(営業)の場として『LeapsIn』をご利用いただくケースも増えている」と、解説しました。
LeapsIn」の登録者の比率に関しては、企業と工場が同等になるよう営業手法や広告投資のバランスを考えながら進めることを心がけたと言い、日置さんは「今までを振り返ると、営業が最も難しかった」と話したうえで、「事業としてマッチングサービスを考えるなら、営業コストはシングルサイドのサービスに比べて倍はかかると思った方がいい」と、参加者へアドバイスをしました。

日置さんは「LeapsIn」には「食品業界における『情報の非対称性』を解消することで、豊かな『食』の提供に貢献する」という想いが込められていると話し、「現在の仕組みでは、健康・環境に良い食品を小ロットで作るとコストが高くなるので、リーズナブルに提供できるインフラを構築していきたい。食品業界がこれまで行ってきた大量生産・大量輸送・大量消費のモデルが限界にきている。食品がコモディティ化しているなかで、多様性のあるエコシステムの創出を図りたい」と、事業への想いを語りました。

あふれる社会課題の中で。新規事業との向き合い方

続いて、日置さんは自身のキャリアについて簡単に紹介し、新規事業創出に至った経緯について話しました。
日置さんは2008年にキリンビバレッジ株式会社に入社し、工場での生産管理や品質保証、研究開発などの業務に従事する中で、新しい生産技術の商品に携わることはあったものの飲料分野でのイノベーションの難しさや閉塞感を感じていたといいます。
「お茶などの商品は今やどこのメーカーも本当においしい。この延長線上で競争を続けていてもいつか限界が来ると思った」と、日置さんは社内新規事業提案制度を利用した当時の心境を語りました。
2016年に一度応募するも落選。翌年に、ユーザーへのサービス提供事例を集めて再応募したところ採択され、2018年から事業開発がスタートしました。

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新規事業に興味はあってもやりたいことが見つからない場合、どうすればいいのかという、多くの人が思う疑問について日置さんは「世の中に社会課題はあふれている。だから『やらなければならないこと』は、山のようにあると思っている」と話し、そのうえで大企業が取り組むべき新規事業について、以下の3つのポイントを挙げました。

  1. 社会課題の解決に寄与する事業
  2. 産業構造に着目したペインの解消
  3. 既存事業のコンフリクトポイントへのアプローチ(社内ベンチャー)

1については「社会課題の解決に寄与しない事業はそもそも新しく取り組む意味がない」とし、これが一番重要であると話しました。

2については、例えばBtoCのアプリを開発したいと考えた時に、取り組む前に自分の知識や経験がデジタルネイティブ世代に勝てるのか、などを問いかけることが必要であるとし、「今までの社会人経験を生かした、自分にしか気付けていない産業構造に踏み込んでこそ、勝ち筋が見えるのではないか」と説明しました。

3は、既存のシステムでは、自社事業の関係や、取引先との関係などで参入しづらい、といったところへアプローチできるのがベンチャーのメリットであると提言。

日置さんは「今回挙げた3つのポイントを、起案の時から意識していた」と話し、自らの経験から導き出された、取り組むべき新規事業についての考えを伝えました。

社内起業に取り組む上での4つのポイント

さらに日置さんは「大企業での社内起業・新規事業立ち上げにおいて大事なこと」を4つの点に分けて説明しました。

まず1つ目に「(新規事業を)誰のためにやるのか?」
日置さんがこの問いを参加者に投げかけた際、参加者からは「消費者のため」、「企業のため」、「社会発展のため」など、さまざまな意見が挙がりました。日置さんは「どれも正解だが、主語は誰かを明確にして、注意深く議論を進めなければならない」と話しました。誰のために新規事業を行うのかわからなければ、社内の人間と話すときに説得力に欠けてしまいます。日置さんは、自身に内在するモチベーションに正しく向き合うことと、主体として最小単位は個人であると結論づけ、「自分がやりたいと思えることでないと、なかなか続かない。新規事業を立ち上げる時は、自分自身が納得して行うことが、まず大事である」と、説明しました。

2つ目は「斬新なアイデア自体に価値はない。行動がすべて。」
日置さんは "悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ" というジェームズ=ランゲの理論を引用し、「まずは行動してみよう」と参加者に伝えました。
行動する際の注意点として「ブレストなどではなく、お客様のところに直接行くこと。また、一つのビジネスプランに固執しないこと、などが重要である」と話しました。

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3つ目は「大企業とスタートアップの考え方の違い」
大企業型は「煩雑」という捉え方で、ジグソーパズルのように一つ一つのピースを順番に組み上げていくものであること。一方スタートアップ型は、ルービックキューブのように、ときには大胆な組み換えが必要な場面が多い複雑性のあるものだと説明しました。

4つ目は「既存事業との距離感の設計について」
常に自分のアイデアについて何が新規なのかを問い掛け、はっきりとさせることの重要性を語りました。

質疑応答で見えてきた新規事業挑戦の意義

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最後は「なぜ社内起業にチャレンジするのか?」についてです。

日置さんは、これからの社会にとって必要なこと・必要な人材について「これまでの枠組みを壊すチャレンジはいつの時代でも求められており、無くなるものではない」とし、さらに「自らビジョンを打ち出し、周囲を巻き込むことがスタートアップの役割」とチャレンジをし続けることの重要性を説きました。

日置さんの講演を終え、続けて質疑応答に入ります。

社内で継続判断がされなかった場合については、「今まで築いたアセットや、ネットワークを生かして、また次の機会に挑戦したり、近年では副業として社外で行うことも認める企業も増えている」と選択肢を持つことの重要性を話し、さらに「応募すること自体にリスクはない」と参加者にエールも送りました。
LeapsIn」のビジョンがぶれなかった理由について聞かれると「プロダクトを基準にして考えると、環境変化などにより当初の事業戦略から軌道修正を余儀なくされた際に、顧客への提供価値、つまりビジョンがぶれてしまう」とメーカーにありがちな考え方について指摘し、「『誰の・何を解決するのか』を、常に考えながら事業を進めることが大事である」と話しました。

新規事業の挑戦を支援し続けるGCカタパルト

今回は日置さんから、新規事業に挑戦する意義や魅力、取り組む上で重要なことなどをお話いただきました。
何か新しいことをしたいと思っても、最初の一歩が踏み出せないもの。しかし、日置さんも語っていたように新規事業に応募することへのリスクはありません。
GCカタパルトでは、プロトタイプ開発費やマーケティング活動費のサポート、プラン精緻化など幅広く手厚い支援を行っています。興味があるパナソニック社員の方は、ぜひチャレンジしてみてください。

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