Mar 8, 2022

サステナビリティ施策のトップランナーが語るビジネスと持続可能性

Game Changer Catapult

サステナビリティ施策のトップランナーが語るビジネスと持続可能性

Written by Game Changer Catapult 事務局

パナソニックのGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)では、新たな価値を生み出すために活動する人たちを、さまざまな形で後押ししています。今回は「実務に活かせるサステナビリティ施策 世界トレンドと他社事例」というテーマで講演イベントを開催。専門家を招き「持続可能性」について語っていただきました。では、イベント内容をレポートしていきます。

<ゲスト講師>
Dr. Mack Ramachandran(マック・ラマチャンドラン)
元国連世界食糧計画(WFP)のサプライチェーン上級管理職。25年以上にわたり、途上国で緊急支援と長期的な持続可能性のためのコミュニティプログラムを構築してきた経験を持つ。早期からカーボンオフセット事業を展開した起業家。気候変動と所得格差の問題解決を目指し、2019年にFutures Inc.を設立。カーボンオフセット、炭素市場アドバイザリー、SDGs関連ファンドをはじめとするソーシャルビジネスを展開。

サステナビリティ施策は、企業価値向上に繋がる

講演は定時後の開催となりましたが、パナソニックでもサステナビリティへの関心は高く、180人を超える参加者が集まりました。ゲスト講師のマックさんは、国連での勤務経験を持ち、途上国で持続可能性のためのコミュニティプログラム構築に尽力されてきた、サステナビリティ施策のトップランナーです。

マックさんは、自身の経験を生かしながら「どうやってビジネスの中でサステナビリティを実現できるか」を考えており、そのポイントをいくつかに分けて語ってくれました。

最初のポイントは「マクロ経済的なメリット」についてです。サステナビリティが企業の価値創出にどう影響するか、3つの側面(従業員・顧客・投資家)から深掘りします。

まず従業員としては、サステナビリティが働くモチベーションになります。特にZ世代やミレニアム世代と呼ばれる人々が仕事に目的意識を持つなど、大きく影響します。実際に複数の国を対象にした調査では、60%の人がサステナビリティは「あればいい」ではなく「絶対に必要」と回答し、45%が「サステナビリティを職場選びの基準にしている」と話しています。さらに日本でも、調査した内の25%が職場選びについて「環境問題への取り組みを基準にする」としています。

このデータを見ても、サステナビリティ施策は企業の生産性を高め、優秀な人材の定着につながると期待できます。

次に顧客の面としては、「サステナブルな製品を選ぶようになった」と答えた人がグローバル調査では60%を超え、国内調査では約30%の人が「環境・社会貢献活動に積極的な企業の商品を買う」、40%の人が「環境・社会に配慮された商品を買う」と回答。これらの数値は数年前より上昇していて、マックさんは「今後10年で5070%に増えるのではないか」と予想しています。

そして投資家については、「ESG評価の高い企業株は超過リターンが約2.5倍」というデータから、環境や社会に配慮した活動はESGの意識がそこまで高くない日本でも、企業の株価に影響すると語りました。

「ターゲット層の価値観や関心事に細かく寄り添う」ことが成功の鍵

続いてのポイントは「サステナビリティ施策の課題」です。マックさんが最初のポイントで伝えたようなメリットだけ見れば「全ての企業がサステナビリティ施策に取り組むべき」と思えますが、施策の導入や実施するとなると、とても複雑な課題があります。

実際に、施策に取り組んだ300社への調査では「サステナビリティ施策が成功した」と回答したのは2%のみ。これは消費者などにIntention action gap(意識と実際の行動のギャップ)があるためで、多くの人が「省エネ家電や電気自動車を購入して、節約や環境に配慮したい」と考えているものの、行動できていない現実があります。

そのため、サステナビリティを追求するには世界のトレンドをつかみ「ターゲット層の価値観や関心事に細かく寄り添う」ことが求められます。高齢者や若年層ではサステナビリティへの関心度合いも異なるので、提供したいサービスによって人口動態や地域性などを考慮する必要があります。

また、環境に優しいサステナブル商品ですが、価格がほかの商品より割高の場合「高額でも購入したい」と答えるのは、意識の高いミレニアム世代でも42%に留まります。このことからも、商品開発に必要な金額や得られるリターンだけではなく、消費者の購入意識について検討して商品を提供しなければいけません。

気候変動をビジネスチャンスに変える「4つのステップ」とは

3番目のポイントは、サステナビリティの中でも最も大きなトピックである「気候変動をビジネスチャンスに変えるにはどうすればいいか」ということです。

マックさんは、4つのステップがあると語ります。

1つ目は「マテリアリティ分析」。ステークホルダー分析や重要課題、興味関心が交差するポイントを特定することです。2つ目は分析から技術イノベーションや顧客の行動変容を促進する「アクション」。3つ目はアクションが与える環境・社会へのインパクトの開示に代表されるステークホルダーのエンゲージメントを高める「コミュニケーション」。そして、うまくいっていることと、そうでないことを分析したり、環境・社会・財務パフォーマンスへの影響を可視化する「インパクト分析」です。

しかし、1つ目のマテリアリティ分析はできていても、インパクト分析まで実施して、しっかりとサステナビリティ施策の結果を可視化できている企業は多くありません。二酸化炭素排出量削減などへの取り組みのインパクトが可視化できれば、株価や社員の満足度にプラスになると考えられます。マックさんはこのインパクト分析が大切だとしています。

利益とサステナビリティの両立には、顧客の分析やコミュニケーションが必要

サステナビリティ施策のポイントについて講演が終わると、マックさんとのQAセッションがスタート。参加者からは多くの質問が寄せられ「利益と環境貢献のバランスはどうするか」という問いに、マックさんは「プロダクトデザインとコミュニケーションがそろっていて、顧客の分析が正しければ両立できる」として、企業利益と地球環境どちらかを犠牲にする必要はないと話しました。

さらに、社会課題の解決方法については「マテリアリティ分析を正しく実行し、ステークホルダーが求めていることを理解すること。そしてサステナビリティに関係する数値を測定して、コミュニケーションすることが重要」だと解説。少ないコストでも結果につながる行動があると語りました。

また、今回の講演を聞いた参加者からの「パナソニックのような、大量生産・大量消費で環境に影響を与えるビジネスから脱却するには」という質問には「大量生産・大量消費が直接環境を破壊しているわけではなく、メリットもあるので単一的に考えることはできない」としつつ、パナソニックが掲げるスコープ3の排出削減目標を例にして「次のステップでは、削減したことで誰が便宜を受けるか分析すべき」と自らの考えを展開しました。

サステナビリティ施策のために、一人ひとりができることがある

サステナビリティや気候変動は、マックさんが語ってくれたように、従業員・顧客・投資家に影響を与える大きなテーマです。ですが、そうしたサステナブルな商品開発やサービスの提供は容易ではありません。

サステナビリティ施策の実現には、明確な目標、トップのリーダーシップ、強力なコミュニケーション、分析力など、さまざまな要素が必要です。一人ひとりが実行可能な範囲は異なりますが、例えば「二酸化炭素の測定を最適化し、データ収集を改善する」「再生可能エネルギーに移行する」「若い世代に目的のある業務を任せる」「耐久性のある製品開発を促進する」など、個人や組織として毎日の業務を通じて行動できることはあります。

今回のイベントは、多くの事例や施策を知ることで、実務の中でもサステナビリティを考えるきっかけになったのではないでしょうか。

GCカタパルトは今後も新規事業のきっかけ作りをサポート

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この記事では、マックさんの考えと共に、サステナビリティ施策について紹介しました。皆さんも共感したことや、新たな発見があったと思います。

イベントを主催したGCカタパルトでは、新規事業アイデアのきっかけ作りとして、今後もさまざまなイベントを予定しています。少しでも興味のあるテーマがあれば、ぜひ参加してみてください。

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