Jan 29, 2021

「食」のイノベーションと3つのキーワード―Smart Kitchen Summit JAPAN 2020で感じたこと―

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「食」のイノベーションと3つのキーワード―Smart Kitchen Summit JAPAN 2020で感じたこと―

矢吹 実奈子(パナソニック アプライアンス社 キッチン空間事業部 経営企画部 ビジネスインキュベーション課)

「食」関連分野の新規事業に携わる身として、世界から「食」の最新テクノロジーや思想が集まるSmart Kitchen Summit Japanに初めて参加させて頂きました。Day2に参加して感じたことについて、以下報告させて頂きます。そもそもSKSJとは、『食&料理×サイエンス・テクノロジー』をテーマに2017年にスタートしたグローバルカンファレンス、共創の場です。
今年で4回目となるSKSJ2020は、12月17日から19日にかけて3日間開催されました。
イベント概要はこちら
以下、全体を通して印象に残った3つのキーワードに関して記載します。

1.食関連分野における「楽しみ」や「美味しさ」の重要性
テクノロジーの力で食にまつわるシーンをどれだけ便利にし、健康への後押しを可能にしても、そこに「楽しみ」がなければ続かないということを、多くの登壇者が語っていました。また、食は誰もが毎日向き合うとても身近なテーマだからこそ、継続性が大切になります。継続するには楽しみが必要であり、「美味しいものを食べたら思わず笑顔になってしまう」や「美味しいものを囲むと楽しい場になる」といった、誰もが感じている「食」そのものが有するパワーを皆さんが大切にされているのだと感じました。

2.「フルスタックアプローチ」という言葉
オープニングセッションの「医食同源」を含む様々なセッションの中で、フルスタックアプローチについて言及されていました。「食」そのものは身近な事柄である一方で、選択の幅が広い領域であることから、ある一定の目標に向かっての行動を継続する事が非常に難しいと感じます。だからこそ、ある部分にフォーカスした対策の提示で終わるのではなく、 上流から下流まで、あらゆる側面からフルスタックでアプローチすることが重要だと気づきました。

3.「食のサステナビリティ」
代替肉、代替チーズ等の植物性素材の使用や全世界的な問題として挙げられるフードロス等、登壇者の皆さんが「食の持続可能性」に関して、多く言及されていた点が印象的でした。今後の「食」を考えていく上で「SDGs」「サステナビリティ」「持続可能性」という要素は欠かすことが出来ないと実感しました。

シェフドクター×食品スーパー×食品メーカーがフルスタックアプローチで実現する医食同源
―Food as Medicine in Action with Full-stack Approach―

Performance Kitchenが提供しているミールキットのメインコンセプトは「医食同源」です。
健康に良いミールキット、それだけでも十分魅力的ですが、フルスタックアプローチにより健康にいい食事を届けようとしているのが、大きな特徴です。
実際に取り組まれているアプローチをいくつかご紹介します。

・レシピ開発を行ううえでは、シェフは提供したレシピの売上に応じ、アフェリエイト収入を得ることができるロイヤリティプログラムを実施
・保険会社と連携し、X回分の食事が保険適用となる、といった対応をとっている
・糖尿病協会ともパートナーシップを結び、食事制限の基準に沿った40種類ほどの製品を提供
・スーパーの商品棚において、目的の食品を手に取りやすいよう色別にラベリング
・キオスク等でも提供しており、帰宅前に翌日の食事をピックアップできる

シェフドクターであるRobert E Grehamさんが手がける食と健康のプログラム「FRESH MED U」を受け、健康のために食事に気を付けようと思った人が、実行に移す際にもPerformance Kitchenの商品が大きな手助けになるでしょう。医療~教育~食事までをフルスタックアプローチで提供することで、継続できる人が増えるのだと感じます。また、周りの環境だけではなく、続けてもらうには、「自分の知っている味、文化」に即したものが食べられ、且つ手頃なだけでなく「楽しめる」ものである必要があるとChiristine Dayさんは仰っていました。Performance Kitchenでは、好みに沿ったものを作ろうと、フロリダではニーズに沿ってキューバ系の豚等を使った料理を新しく10個創作したという事例もご紹介頂きました。今後もジャマイカ系や、「チキンだけで作って欲しい」というニーズがあれば、その要望に即したメニュー等、ニーズに合わせて対応をされていくということでした。

ベンチャーが主食のアップデートに挑む
―Update Your Everyday Meals―

続いてBASE FOODの橋本舜さんがご登壇されました。BASE FOODでは、栄養士の監修の下、作られた完全栄養食として、30種類の栄養素が接種可能な主食(パンやパスタ)を開発し、販売をされています。シンプルなロジックとして「動物性よりも美味しい植物性の肉を作る」を掲げるBeyond Meatをベンチマークとし、それと同様に、「美味しい主食」を提供したいと日々取り組まれています。特に印象に残ったの事は「完全栄養食というと、食の楽しさを奪うイメージがあると思うが、おいしさ、食べる楽しさを重視してBASEは作っている」と仰っていたことです。私自身、BASEの取り組みや商品は存じ上げていましたが、「おいしくないんだろうな」と先入観を持っていました。それというのも、このような完全栄養食は、おいしさ、食べる楽しさではなく、簡単に栄養を摂りたいという「効率主義」から生まれたものだと思い込んでいたからです。
しかし、BASE FOODでは、味の素との協業もスタートされており、「健康でサステナブルな食事であっても、おいしくあって欲しい」という考え方にて両者の意見が合致しました。健康やサステナビリティは大切と頭でわかっていても、やはり「おいしい」「楽しい」がないとなかなか続けられないもの。二律背反に思ってしまいがちですが、そういったことを諦めずに目指し続ける姿勢、そして橋本さん自身がコアコンピタンスと明言されていた「目標をおかわりし続ける(絶えず進化し続ける)こと」は、とても魅力的で、吸収すべきポイントだと感じました。

フードビジネストランスフォーメーション:ロングテールインサイトへの挑戦
―Food Business Transformation to "Long Tail Insight"―

お昼のセッションでは、弊社の堂埜が登壇。これまで、「第1の波:物質的豊かさ」をお客様に提供してきましたが、今の時代は、不便を解消するだけでは、お客さんは満たされず、これからは「第2の波:パーソナルの豊かさ」「第3の波:関係性の豊かさ」に乗っていく必要があります。第2の波の情緒的価値の事例として、初めはオートコースが使えないような"あえての意地悪レンジ"、つまり不便益がむしろ価値を生んでいるという話がありました。第3の波の事例としては、GCカタパルトから生まれたギフモのデリソフターです。嚥下障害の方が単に食事できるだけではなく、これで調理をすることで、家族が食べるものと「見た目そのまま」の同じのものが食べられるようになり、特別扱いされない、互いに遠慮し合わない関係に改善できる、という話でした。第2、第3の波に乗るために、社内でもあらゆる部門が奮闘中ですが、改めて、私たちが大切にすべきこと、ロングテールの価値づくりが重要であると改めて認識しました。

Picture of chaptar3-image_フードビジネストランスフォーメーション

今、日本の海に何が起きているのか
―Save the Ocean By Foodtech―

日本は海洋資源に恵まれているが、今、多くの魚の数が過去と比較して大幅に減少しています。環境問題など要因は複数ありますが「乱獲」も大きな一因であり、安く買いたい→安いものを仕入れたい→多く獲って多く売る(薄利多売)という循環がうまれているので、消費者である私たちも他人事ではありません。Chef for the Blueの佐々木ひろこさんは、今のままだと将来どのような食卓になるのか、「未来の海のレストラン」というイベントを通じて警告されています。

Foodtechと掛け合わせた取り組みについて、自身が漁師もされている、海光物産 大野和彦さんがお話くださいました。2020年12月に改正漁業法施行され、魚種ごとに漁獲可能量が決められ、8割の魚に適用されました。持続可能性を柱に漁業者自ら守っていくわけですが、魚の数が減少するとなると、価値の向上が必要となります。そこで、いまIBMのIBM Food Trustと連携され、取り組まれているのが、Ocean to Table:漁師が獲ったところからお届けまでをブロックチェーンの中で裏付けをする、一気通貫で管理する、ということです。消費者に届くまでのトレーサビリティを確保することは、奴隷労働や漁獲量の管理データのゆがみになる密漁を排除することになり、サステナビリティにつながるのです。この取り組みにはFoodtechが大きく活きています。ただ、この取り組みがサステナブルな海を実現するためには、これからもおいしい海産物を食べ続けるためには、さらなる漁業者の賛同はもちろんのこと、私たち消費者がこのことを知り、正しく、漁獲量を守って獲られている海産物を買う、という行動に移していくことが、非常に重要であると感じました。

『一粒のソリューション。』Plant-Based Food Solutions実現に向けて
―"Shingle bean solution" Leading Plant-based Food Solutions―

こちらのセッションでは、製油会社である不二製油グループ本社 清水洋史社長が登壇されました。植物由来の食素材を活用し、独自のサステナブル技術で社会課題の解決に挑まれているPlant-Based Food Solutionsについてお話されました。大豆は油用の作物でもありますが、たんぱく質が30%含まれています。不二製油では、そのたんぱく質に注目し、60年間取り組んでこられました。それが今、少しずつ軌道に乗りはじめたとのことですが、その背景にはフレキシタリアン(一部菜食主義を取り入れる人たち)の増加があると言われていました。

また、これまでの大豆ミートは脱脂肉だったのですが、お肉のおいしさというのは脂が大きく影響しているため、大豆ミートにも油脂を加えることでおいしさが向上されているそうです。ここには、口どけ感や後味の残り方など、油脂メーカーとして、チョコレートで培った油脂の溶け方のノウハウが活かされているとのことでした。そして印象的だったのが「おいしくなければ続かない=サステナブルではない」ということ。実際、今回口どけ感まで研究された大豆ミートやSoy Uniのお話を伺い、おいしいなら取り入れてみたいと率直に思いました。Foodtechの進化により、またサステナビリティの観点により、「食材」もどんどん変化・進化していきます。調理家電で大豆ミートを使ったレシピを紹介する日も近いかもしれません。私たちもこの流れに遅れることなく、情報をキャッチして価値をアップデートしていく必要性を感じました。

今回のSKSJ2020では、食のイノベーションを起こしている皆さんの「食への熱い思い」とそれがあるからこそのSDGs観点での取り組みの多さを目の当たりにしました。
なにか新しいガジェットやサービスだけがFoodtechではなく、未来を見つめ、あらゆる手段、方向から豊かで多様な食のシーンをつくっていくことが、Foodtechであり食のイノベーションだと学びました。そして、キーワードに挙げた「おいしい・楽しい」「フルスタックアプローチ」「サステナビリティ」は食の今後を考えるにあたり、すべて必要不可欠だと感じました。私自身の日々の取り組みの中でも、このキーワードやSKSJで学んだ事例を思い出しながら、「食」の新しい価値を見出し、事業の創造に向け、前進していきたいと思います。

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