Oct 6, 2020

michor(ミチャー)が可視化する見えない世界:カタパリスト達の現在地〈ビジネスコンテスト3・4期生編〉Vol.2

Game Changer Catapult

michor(ミチャー)が可視化する見えない世界:カタパリスト達の現在地〈ビジネスコンテスト3・4期生編〉Vol.2

Written by michor リーダー 中島 有季子

こんにちは、「michor(ミチャー)」プロジェクトのリーダーを務める中島です。michorは、パナソニックの新規事業創出活動Game Changer Catapult(以下、GCカタパルト)の第3期ビジネスコンテストを通過した、ヘアアレンジをする時に普段は見ることができない後ろ姿を映す鏡の事業アイデアです。現在はプロトタイプを用いた美容室店頭での実証試験を通じて、お客様へのヒアリングとそれを基に製品の改良を行うなど、日々チャレンジを続けながら事業化に向けて推進しています。今回は、michor誕生までの経緯やビジネスコンテストで経験したこと、これからの展望などについてお話します。

目が届かない場所を「見える化」するという新しい価値

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私が在籍している事業部では、留守中にペットの様子を確認する時などに使われるコンシューマ向けのカメラ事業も担当しているのですが、新しいアイデア出しに取り組んだ際、カメラの本質は「見えないところを自分の目に代わり見てくれること」であり、鏡を使用することがまさにカメラの本質を実現するための重要なアイテムであるという気づきを得たことが、michor発案のきっかけになりました。
そして日常生活で、見たいけど見えなくて困るのはどんな場面かということについて、社員にリサーチ。その結果、ヘアアレンジや髪染めなどの時に、後ろを映せるものがあれば便利なのではないかという洞察を得て、michorの元となるアイデアが生まれました。

まったく新しいやり方で事業を育む

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その後、業務の範疇でアイデアの検討を進めていた時に、GCカタパルト主催のビジネスコンテストの存在を知り、早速同じワーキンググループのメンバー3人で応募することにしました。通常の商品開発フローではなく、あえてビジネスコンテストという形態を選んだのは、現状の環境では非連続的な価値創造を行う新規事業についての知見がほとんど無く、実現が難しいと考えたからでした。

ビジネスコンテストの1次審査には、実際に困っている人の悩みを解決したいという強いWillを持ってプレゼンに臨み、無事通過することが出来ました。1次審査を通過した後は、自身の事業アイデアを検証するために顧客を訪問し、フィーバックを得るということを何度も繰り返しました。同時に、新規事業創出の専門家の方々からアドバイスを頂き、アイデアのブラッシュアップを継続的に行いました。

BtoCからBtoBへシフトし、実証実験を開始

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当初は、BtoC向けサービスとして事業化を検討していたのですが、社内でのヒアリングや調査を進めていくなかで、人を魅力的に演出するプロであるヘアスタイリストの方々をターゲットにした方が、より意義深い、付加価値の高い事業にできるのではないかという仮説を立て、BtoBへとシフトチェンジしました。
しかし、美容業界は私たちにとってまったく未知の世界。そこで、まずはプロトタイプ(試作機)をつくりました。プロトタイプを迅速に準備できるのは、メーカーでの社内起業の利点と言えるかもしれません。
次に実証実験に協力いただける店舗様を探し、設置を行うのですが、これは社員が通っている美容院から少しずつネットワークを広げていきました。michorに込めた思いにたくさんの方に共感いただけたのもうれしかったですし、人とのネットワークの大切さを実感しました。

2019年11月から行っている実証実験を通してヘアスタイリストの方々からは、従来以上に丁寧な事前カウンセリングや、施術中の説明に活用できるというmichor導入のメリット、お客様からは、自身のうしろ姿を見るという新しい体験ができるという喜びの声もいただいています。一方で、機器の通信速度や画質、スタンドの大きさなど、技術・運用面でさまざまな課題が見えてきました。現在は改良した二号機を用いた実地検証中で、利用者の方からフィードバックをいただきながらトライアンドエラーを繰り返しています。

お客様の声をチームのモチベーションに

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お客様を訪問し、設置、そして実証実験まで、地道な作業でしたが、収穫も多くありました。ひとつは、michorの思いに共感するファンの方に出会えたこと。これにより「スタイリストの方にこそ需要があるのではないか」という仮説が確信に変わりました。もう一つは、お客様の生の声を聞くことで精度が上がり、より手触り感のある商品が実現できること。またそれにより、開発者自身のモチベーション向上にもつながり「もっと良い物を作ろう」という風土が醸成されたのは、本当によかったと思います。
ワーキンググループの3名でスタートしたmichorのプロジェクトですが、今年の4月には在籍している事業部に新規ビジネスデザイン課が発足し、新規事業に集中できる環境が整いました。まだまだ多くの課題を抱えてはいますが、開発部門と連携を取りながら、進めていきます。

日常の中でニーズを見つけることが大切

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通常の業務のなかでは、おそらく実現が難しかったであろうmichorが着実に形になりつつあります。そう考えるとビジネスコンテストとの出会いが大きなターニングポイントでした。ビジネスコンテストの一連のプログラムには、新規事業創出のための心構えに始まり、デザイン思考によるユーザーエクスペリエンス(UX)設計やチームマネジメント、効果的なプレゼン方法など様々なプログラムが準備されているので、短期集中で体系的に学ぶことが出来、やる気さえあれば誰でも挑戦することが可能です。
もし、これからコンテストに応募しようと考えている方にアドバイスを贈るとするなら、身近にあるお困り事や、お金では解決できない潜在的な課題を見つけることが一番大切だということです。リサーチを進めていくと必ず同じよう悩みを抱えている人が見つかります。
そしてプレゼンの際には、実際にニーズがあることを証明し、熱量をもって伝えることができれば必ず審査員に響くはずです。コンテストの過程でそれぞれのメンバーが得意分野を活かし、補いあっているという状況も刺激になると思います。ぜひ新規事業創出にチャレンジしてみてください。


michor

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「後ろ姿を映す鏡」をコンセプトに作られたmichorは、ワイヤレスカメラとディスプレイの組み合わせで構成。ワンタッチで後ろ姿を表示でき、正面と後ろ姿を同時に確認しながらヘアアレンジができる同商品は、現在、多くの美容室で実証実験が進んでいる。michorという名称は、プロジェクトリーダーである中島の出身地である福岡の「見る」の方言「見ちゃ~」とmirror(訳:鏡)という単語の末尾「or」を組合せた造語。

関連記事:プロジェクト紹介はこちら
     「新規事業創出とは文化を変えること。ヘアアレンジの概念を打ち破るmichorの挑戦」はこちら

カタパリストとは
GCカタパルト主催の社内ビジネスコンテストへの参加経験者の総称。

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