Mar 19, 2020

あなたとあなたの周りに、キレイな空気を ~AiryTailが目指すビジョン

Game Changer Catapult

あなたとあなたの周りに、キレイな空気を ~AiryTailが目指すビジョン

Written by AiryTail 加藤優貴


経済成長著しいベトナムで、交通渋滞の中バイクに乗る人とその周囲の人々、双方が呼吸する空気を浄化するパーソナル空気清浄マスク「AiryTail」。この事業にかける私達の想いと、その先に見据える将来のビジョンについてご紹介します。

暮らしを豊かにし、地球環境にも貢献する「地球家電」で文化を変える

私たちのチームが実現したいビジョンは、使うほどに地球環境の改善につながる性能を有した家電、名付けて「地球家電」を世に出し、消費に対する姿勢や文化を変えていくことです。

既に、アパレル業界の企業が、回収した海洋プラスチックゴミで作られたシューズを販売する等、取り組みが進んでいます。企業による環境貢献はCSR活動の枠を超え、顧客に届く、あるいは顧客から選ばれる価値となり、ビジネスにつながる時代が訪れています。私たちは、事業を通じた社会生活の向上を理念に掲げるPanasonicだからこそ、こうした環境貢献性能を有した商品を他社に先駆けて世に出すことに大きな意義があると考えています。

テーマは大気汚染。「誰の何を」解決するか?

そんな地球家電の第1号として私たちが提案しようとしている事業アイデアが「AiryTail」です。AiryTailは、地球環境問題の中でも空気の課題、大気汚染に焦点を当てた事業です。人間が、水や食べ物よりも多く口にしているもの、それが空気です。一般的に人体が摂取する物質の、実に85%が空気だと言われています。それだけに、大気汚染がもたらす人体への悪影響は深刻で、WHOによると年間420万人もの人が、屋外の汚染された空気によって死亡しています。※1 また、空気中に含まれる汚染物質はやがて地面や海洋に落下し、土壌汚染や水質汚濁の原因となることも知られています。昨今では、環境問題と言えば、先進国を中心に温室効果ガスによる気候変動や海洋マイクロプラスチックの問題が取り上げられる機会が多くなっていますが、発展途上国においては、現在でも健康を害するレベルの大気汚染が日常的に発生しています。

※1:出典 WHO(https://www.who.int/health-topics/air-pollution#tab=tab_2)

こうした空気の課題を、当社がエアコンや空気清浄機で培ってきた技術によって解決することはできないか。検討を開始した当初は、「空気をキレイにすること」に重点を置き、エアコンの室外機にフィルターを装着して空気清浄機のように活用するアイデア等も考えましたが、それでは使って頂くお客様にとってのメリットがわかりづらいという課題がありました。事業であるからには、お客様に商品やサービスを選んで頂く必要があり、そのためにお客様に提供する価値を明確にしなければなりません。「地球家電」のビジョンを実現するには、「個人の課題を解決すると同時に、環境に貢献する」というコンセプトが必要だという考えに至りました。そこで、ユーザーインタビューを繰り返し実施することで、「誰の、どんな課題解決するのか」についてより深堀することを進めました。

ベトナムバイクライダーのお困りごととソリューションの形

「汚い空気に困っている個人」を探し出すべく、インタビュー調査を繰り返していく中で浮かび上がってきたのが、「ベトナムのバイクライダー」でした。東南アジア等の新興国においては、急速な経済の発展に交通インフラの整備が追い付かず、都心部の道路を中心に深刻な交通渋滞が発生しています。そこから引き起こされる大気汚染がバイクライダーや、その周辺の住民にとって重大な問題となっています。公共交通機関が十分ではないベトナムにおいて、バイクは生活する上で必須のアイテムであり、バイクを持つ世帯の比率は9割近くに上ります。また、環境省の調査によれば、ベトナム大都市部の大気汚染の内、70%は道路交通に起因するものであるとも言われています。最近では、ハノイとホーチミンが「世界で最も空気の汚い都市」※2 1位と3位にランクインしたという事実が、現地メディアでも大きく報道されました。

2  出典 Tien Phong(https://www.tienphong.vn/cong-nghe/sang-nay-ha-noi-va-tphcm-vao-top-thanh-pho-o-nhiem-1468317.tpo)

この様に健康被害の危険が高まる中、ベトナムのライダー達はどのような対策を行っているでしょうか。日常的にバイクを利用している30名の方に現地でインタビューしたところ、全員が「マスクで防いでいる」という回答でした。特に女性は、空気対策用の紙マスクと日焼け対策用の布マスクを二重に使用するなど、非常に意識が高いことが判明しました。しかしながら、彼女たちは、「マスクのフィルター効果、日よけの効果は十分ではないと思う」「内部が蒸れて不快」といった不満を持ちながらも、性能への諦めや、暑さと息苦しさを我慢して、マスクを使用している、そんな課題が見えてきたのです。

1_Picture of  a Vietnamese woman riding a motorcycle _ベトナム女性のバイク乗車スタイル写真ベトナム女性のバイク乗車スタイル

こで、AiryTailはまずライダー個人の課題を解決するために、「キレイな空気が吸える」「日焼けしない」「暑くなく、息苦しくない」ということを基本性能にしました。そのために、顔全体をUVカット加工の布で覆って厳しい日差しから肌を守り、電動ファンで引き込んだ空気を2種類のフィルターを経由させることで浄化し、口元付近にキレイな風を供給します。更に、首元にはバイク走行時の風を通すための風路をもう一つ設けることで、首回りに涼しさを提供できるようにしました。

そして最も重要な要素である、「同時に環境にも貢献する」という地球家電としてのユニークポイントをどのように作り出すか。私たちの出した答えは、首元の風路にもフィルターを配置し、そこを通すことでライダーの吸う空気だけではなく、その周辺の空気まで浄化するという仕組みでした。仮に1人が30km/hの速度で走行した場合、約30人分の呼吸量に相当する空気を浄化できます。つまり、より多くのライダーが使えば使うほど、周辺環境にポジティブな影響をもたらすことになります。

さらに専用アプリと連携することで、ユーザーは空気の浄化量に応じたポイントを溜めることができます。溜まったポイントは、フィルター等の消耗部品と交換に使え、協業パートナーのポイントとの相互交換等、活用の幅を拡大することも検討中です。環境貢献という利他的な行動を、ポイントインセンティブの形でユーザーメリットに置き換えていくことで、より多くの人に参加してもらえるようになると考えています。その他にも、センサーで収集した空気の情報をライダー同士でシェアすることで、より空気のきれいな運転ルートを選べるようになる等、みんなで使って効果を出していく「ソーシャルアクション型の空気清浄マスク」としての価値を高める仕組みを追求していきます。

2_Picture of prototype making_プロトタイプ制作の様子プロトタイプの制作の様子

地球家電の今後の展望と挑戦

チームリーダーである山中の活動の原点になっているのが、「ハチドリのひとしずく」※3という物語です。山火事に小さな体で立ち向かうハチドリのように、一人ひとりが「私にできること」を積み重ねることで、やがて大きな問題の解決に結びつくと、私たちは信じています。世界中の多くの人々は、環境問題の深刻さを理解しながらも具体的なアクションを起こせていないのではないでしょうか。私たちは、地球家電をお届けすることで、「自分がやらなくても、誰かがやってくれる」という今の風潮や人々の行動を変え、「誰もが当たり前に環境貢献できる」状態を作りたいと思っています。環境のために、利便性をあきらめたりや自己犠牲を強いるのではなく、「人も地球も豊かになる暮らし方」を家電という商品を通じて実現することを夢見ています。そのためにも、このAiryTailを事業化し、お届けすることは、ビジョン実現に向けた重要なファーストステップです。将来的には使う人のメリット以上に、環境に良い影響を与える商品(例えば、バイクの排出量そのものを抑制するプロダクト等)を世に出すことで、さらなる環境改善に貢献したいと考えています。

地球という""の環境と、そこに住まう人々の暮らしをより良いものしていくための地球家電。

私たちは、世界の文化を変えていくことで持続可能な社会の実現に挑戦し続けます。

3:ハチドリのひとしずく(光文社 2005発刊 監修:辻信一)

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