Dec 17, 2018

「OniRobot(オニロボ)」と老舗「おにぎり浅草宿六」が夢のおにぎり対決!

Game Changer Catapult

「OniRobot(オニロボ)」と老舗「おにぎり浅草宿六」が夢のおにぎり対決!

Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)で第2回ビジネスコンテストを通過したおにぎりロボ「OniRobot(オニロボ)」(以下、OniRobot)は、おにぎりのグローバル化を目指して事業検討を進めています。

減り続けるコメ消費への危機感、「おにぎり」で海外に打って出る!!

日本ではコメの消費量が減り続けているのを知っていますか?実は1996年には950万トンあった主食用米の需要は、2016年には約750万トンと、この20年で2割以上も減ってしまっているんです*。コメは日本食の中心、このままでは伝統的な食文化まで崩壊の危機にあります。この危機を救うには日本国内の需要だけでは足りないのではないか、海外の、日本のコメを知らない人にもごはんを食べてもらう必要があるのではないか、海外の人でも気軽に、おいしい日本のごはんを食べてもらうにはどうすればよいか・・・・と目をつけたのが「おにぎり」でした。

まずは、最も難しい握り技術を再現するために、力加減を制御しながら5方向から圧力をかける「3D形成ハンドによる圧力フィードバック制御技術」を搭載したおにぎりロボットを開発しました。

1_OniRobotの試作機_Prorotype of OniRobot.JPG

また、機器だけでなく、健康で、楽しく、手軽におにぎりを食べられるアプリによるコミュニケーションの仕組みと、無駄なくお店を運営できるシステムを組み合わせたソリューション事業として、グローバルに打って出ようと目論んでいます。

2_OniRobotのプロトタイプ_OniRobot Prototype.JPG

SXSWで自信をつけたOniRobot、まさかの憧れのお店とのおにぎり対決に挑戦

3月にアメリカ・テキサス州オースティンで開催されたサウス・バイ・サウスウエスト2018 (SXSW)では、実際にOniRobotおにぎり800個をにぎって提供しました。その結果、おにぎりを食べたことのない海外の方からも、「初めてだけどおいしいね」「クールだね」というお声を多くいただき、おいしさに国境はない、やはり「ごはん」そして「おにぎり」の美味しさは海外でもイケる!ということを実感し、自信をもちました。

3_SXSWに出展したOniRobot_OniRobot at SXSW_2018.JPGSXSWでの様子、たくさんの方におにぎりを食べていただきました。

では、OniRobotのおにぎりを膝元の日本人はどう思うか。一般社団法人おにぎり協会さんに相談を持ちかけたところ、「この味ならいける。職人さんと対決してみましょう」とのびっくりのご提案が。それもなんと、我らOniRobotチームが理想の味と目標にしている、東京でいちばん古いおにぎり専門店「おにぎり浅草宿六」の三代目三浦洋介氏と!かくして 2018年11月28日、「OniRobot(オニロボ)」と老舗おにぎり店が夢の競演、と相成ったのです。

ついに西武池袋本店でおにぎりの老舗「おにぎり浅草宿六」さんと夢の競演へ

今日のコメは、会場であるそごう・西武さんが「おにぎりに最適」とイチオシの会津産ミルキークイーン。粒を立てつつ独特のもっちり感と甘みが引き立つように、と炊飯をはじめます。

4_ミルキークイーン_Milky Queen_.JPG

ごはんの香りが立ちはじめた頃、ふらりと会場に現れたのは、「宿六」の三浦洋介さん。ダウンジャケットにニット帽というカジュアルな姿は、創業64年の伝統を受け継ぐ老舗の三代目には見えません。

5_おにぎり浅草宿六の三浦洋介氏_Yosuke Miura from Yadoroku_.JPGおにぎり浅草宿六の三浦洋介氏とOniRobotプロジェクトリーダーの加古さおり

少し拍子抜けしながら、今日の段取りを打合せ。

加古「ええと、ごはんの炊き方は・・・」

三浦氏「おまかせしまーす」

加古「お塩は・・・」

三浦氏「うちの使ってくださーい」

あら、そんなのでいいの?とさらに不安な気持ちになりつつも、すぐにそのウラに隠された強い自負を知ることになるのです。

11時30分、事前に予約をしてきてくださったお客様が揃い、おにぎり協会理事の関さんの、「おにぎり協会は、正しい米食文化を世界に発信することを目的に活動している。今回のイベントでは、どちらがおいしいのか優劣をつけるのではなく、いろいろなおにぎりの楽しみ方があることを知ってほしい」との挨拶から対決が始まりました。

6_おにぎり協会の関さん_Mr.Seki from Onigiri Society.JPGおにぎり協会の関さん

まずは、「宿六」 三浦さんから。

「外はしっかり、中はふっくら に握ります」

「手塩は、指先第一関節までにつく量で」

「いちばんのポイントは、ごはんがあつあつであること」

「ごはんの量は、手のひら半分に収まるくらい」

「手に取ったら平らに広げて外の面をしっかり作る」

「広げて、外からまとめて、3回にぎる」

「おにぎりは三角形だから、かならず3回、毎日練習してね!」

「これであなたもおにぎり屋」

親しみ易い語り口で、企業秘密がバンバン明かされます。お客様も、え、それでいいの?という顔。

8_おにぎりを握る三浦氏_Mr. Miura making Onigiri.JPG

7_おにぎりを握る三浦氏_Mr. Miura making Onigiri.JPG

それを受けて、OniRobotの登場。握りの理想は「宿六」とおなじ、「外しっかり、中ふっくら」です。中ふっくらに握るには、あつあつの広げたごはんを、5方向からキューッと絞り、一気に力を緩めること、5回。この緩急ある圧力のかけ方で、外の面をしっかり作りつつ、中に空気を含ませるのです。おまけに、圧力パターン次第でギュッと詰まったしっかりおにぎりや、ほろほろ崩れる柔らかおにぎりも自在なことまで紹介。三浦さんに負けじとOniRobotも特許の握り技を全公開です。

9_OniRobotを紹介する加古_Saori showing OniRobot.JPG

加えて、職人さんの頭脳を担当する、「OniRobotアプリお試し版」も登場。食感の硬め・ふっくら・柔らかめ、大きさの大・中・小、具材の種類(今回は塩だけ)などお好み注文も体験していただきました。

10_OniRobotのアプリ_OniRobot app.JPGOniRobotアプリのプロトタイプです。

11_アプリを確認する参加者の皆さま_Attendees trying OniRobot app.JPG実際に試していただきました。

そして、それぞれのお客さまの手元に2つのおにぎりが配られ、いよいよ食べ比べです。試食の様子を見守る、緊張の時間。しばらくすると、客席からお声が上がります。

「どちらもおいしい」

「宿六さんの塩加減が最高!」

「OniRobot君の外しっかり中ふっくらがすごくよく分かります」

「宿六さんはふわふわ。OniRobotも、もう少し柔らかいといいなぁ」

結果、半数の方が「同じくらいおいしい」と評価してくださいました。OniRobot君、善戦です!

結果は引き分け、それでも痛感した「職人さんにあって、ロボに無い物」

お客さまから予想以上の評価と応援のお声をいただき、握り技への自信は深まりました。でも、やはりこれだけでは勝てないと痛感したこともあります。それは「人である強さ」、つまり職人である三浦さんご自身の魅力と柔軟な対応力です。実は、三浦さんの実演中に「お客さまの反応を見ながら、OniRobotの握りと違いが分かるように加減して握ってくれているな」、と感じていました。そしてその結果、「分かるね」「違うね」と納得し、来場者の方に食べ比べを楽しんでいただき、喜んでもらえた。それが大事。食べる人の気持ちに寄り添い、おにぎりそのものの味以上の満足感を生み出す、その心遣いは人にしかできないことです。

もうひとつ学んだことは、「おにぎりは、自由でいいのだ」、ということ。職人さんといえば、ご自身の道を妥協なく究めるイメージですが、三浦さんはひと味違うんです。あつあつごはんを使う、3回で均等に握る、というポイントさえ押さえれば、今回のようにお店の外や海外でも握り技を披露するし、どんなコメや塩であってもおにぎりはできる。海苔にしても、裏表関係なし。「つるつる面、ざらざら面それぞれに味を感じる特徴が違うから、どちらが正解というのはなく、両方楽しんでほしい。」 この自由さには、目からウロコが落ちました。それくらい、自由で、いつでもどこでも楽しめるのが「おにぎり」なんですね。

そして、それを「シンプルに、カジュアルに伝える」大切さ。実はこの対決の一日前、大きなサプライズ発表がありました。「おにぎり浅草宿六」が「ミシュランガイド東京2019」に掲載され、さらにミシュランに新たに「おにぎり」というジャンルが加わったのです。これは、三浦さんの「お客様に楽しんで食べてもらおう」、という気持ちが世界中の人に伝わり、響いたからに他なりません。言葉が通じなくても伝わるシンプルなこだわり、ミシュランに掲載されるほどの名店で、老舗でありながら初めての人の緊張も解きほぐすカジュアルさ。64年間も暖簾が続いているのは、ただ技術を守ってきただけではなく、お客様に寄り添う心があってこそです。これから世界に打って出るおにぎりには、この「宿六ホスピタリティ」が欠かせないと痛感しました。

以上、今回のおにぎり対決。食べ比べ自体はOniRobotもいい勝負をしましたが、三浦さんの姿からは「技術がいかに進化しても、それだけではまだまだ勝てないよ」とあしらわれてしまったとも感じられて、正直ちょっと悔しい。しかし、実際の開発にあたっては、「職人にあってロボにないもの」という観点から、まさしく今悩んでいたアプリ開発の方向性への答えをいただいた気がします。OniRobotに必要なのは、お客さまの喜びと満足を引き出すおもてなしの心です。今後、提供サービスや注文アプリにこの心を吹き込み、目標である「世界中の人においしくコメを食べていただくとともに、国内の職人不足の解消にもつながるソリューション」の実現に向けてさらに加速して開発を進めていきたいと思います。

12_イベントの様子_At event venue.JPGイベント会場の様子

これからも広くお客さまのご意見に耳を傾けながら開発を進めてまいりますので、我らがOniRobotの進化にぜひご期待ください。

13_OniRobotプロジェクトリーダーの加古とGCCの池野_Saori from OniRobot and Ikeno from GCC.JPGOniRobotプロジェクトリーダーの加古とゲームチェンジャーカタパルトの池野直也

*資料出展:農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」

Special thanks;おにぎり浅草宿六http://onigiriyadoroku.com/

みなさん、機会があれば是非、東京でいちばん古いおにぎり専門店「おにぎり浅草宿六」に足を運んでみてください。OniRobotチームが理想とするにぎり加減と海苔の香り、具材とのバランス。そして、カウンターのご主人三浦さんとのやりとりを通じて、たとえどこの国の人であろうがみんなが笑顔でかぶりつける空間。おにぎりは全世界の人に喜んでもらえる日本食だ、とご納得いただけると思います。ミシュランに載っても営業スタイルは変えないとのことなので、行列必至です。ごはんがなくなる前に行ってくださいね!

Special Thanks;一般社団法人おにぎり協会 https://www.onigiri.or.jp/

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