Aug 21, 2018

「映像コンテンツとハードウェアの未来」について語る:We WorkでのAMPイベントレポート

Game Changer Catapult

「映像コンテンツとハードウェアの未来」について語る:We WorkでのAMPイベントレポート

「映像」とはどんな可能性を持っているのか、未来では映像はどんなハードウェアによって(あるいはハードウェア無しで)楽しまれるのか、見る人は、創る人はそれにどう関わっているのか。そんな映像コンテンツとハードウェアの未来について語る会を、6月12日六本木アークヒルズのWeWorkにて開催しました。

ファッション・コスメ業界を中心に様々な映像制作を手掛ける映像作家の菊田あいりさん、撮影機材特化型のシェアリングアプリ「Totte(トッテ)」をローンチ予定のCREARC株式会社代表取締役 五十嵐典之さん、そしてGame Changer Catapult(以下GCカタパルト)で住空間ディスプレイ「AMP」のプロジェクトリーダーである谷口と、参加してくださった皆様とで和気あいあいと議論しました。

映像の作り手、映像の作り手を支援するプラットフォーマー、そして映像を映し出すハードの作り手と、それぞれの立場で映像に魅入られた3人によるディスカッションの模様をレポートします

3_3人で話している様子_Three of them talk each other.JPG左から、谷口、五十嵐さん、菊田さん

「映像でインテリアをやりたい・・!」共通の思いがつながった瞬間

谷口:菊田さんと初めてお会いして、「住空間ディスプレイのAMPをやっています」って自己紹介し終わったら、すごく真剣に「感動した」って言ってくださって驚きました。そんな出会いでしたね。

菊田:感動して、泣きそうになったんです。(笑)

谷口:自己紹介をして泣かれるという初めての経験で(笑)、なんであんなに感動してくださったんですか?

菊田:私は大手インテリアショップに勤務したり、VJ(ヴィジュアルジョッキー)をしたりという経験を経て今は映像作家をやっているんですが、「ずっと、映像でインテリアをやりたかった」っていう気持ちを10年以上持っていたので、やっとここにきて、こういう形でつながったんだ・・!みたいな感動がありまして。

谷口:そうだったんですね!菊田さんは映像コンテンツというソフトウェアから、僕自身は映像機器というハードウェアのアプローチから「映像と、それを映し出すハードはきっとインテリアになる」という想いでやってきたんですよ。同じ想いの方がいてこちらもすごくびっくりしました。

僕はよく、「空間を作る上で、なぜ映像にこだわっているの?」と聞かれます。映像は自分で用意するのが難しい一方で「気配を感じる」とか、「こころを動かされる」とか、五感に訴える力が非常に強いと感じています。その面白い力をもっと世の中にインストールできるんじゃないかと思ってやっています。

菊田:私は子供のころに見た映画『ハリーポッター』のシーンで、食堂の天井が魔法で星空になったり、シャンデリアになったりするシーンを見て、『これは魔法じゃなくてもできるんじゃないか」と思ったのが原体験です。天井の様子が変わるのであれば、1面だけじゃなくて、壁も含めて3面になったりするともっと可能性があるんじゃないか、とか、そんなところから映像の力を感じていました。

谷口:ちなみに、今日、会場のAMPで流させていただいている菊田さんのコンテンツはどんな映像ですか?

菊田:広告映像ですね、ファッションとビューティーがメインです。

谷口:広告だということを忘れてずっと見ていたいと思うのが新鮮でした。

菊田:もしそう思っていただけるとしたら、ストーリーがないからかもしれません。ストーリーを追うのではなく、写真集をめくっているような、一枚一枚の絵を見ている印象というか、世界観を大切にしています。

谷口:「ストーリーがない」、というキーワードが出ましたけども、一般的なテレビコンテンツのような集中して「視聴」するコンテンツと比較すると、「これじゃしっかり見てもらえないんじゃないか」という懸念はないのでしょうか。

菊田:そういうことは実はあまり心配していなくて・・・・。イメージを大切にして作っています

谷口:菊田さんが作っているコンテンツって、僕のやりたいAMPの世界と相性がいいのかもしれないなと感じます、というのは、インテリアとしての映像となると、「集中して視聴しないという前提」で映像が創られる必要があると思っているからなんです。

菊田: そうですね。AMPでいうと、良い雰囲気のホテルのロビーで暖炉が燃える様子を映した映像を流す、とか、料亭で水の流れだけの映像を流すとかいろんな可能性があるんじゃないでしょうか。不思議な、心地よい気持ちになりそうな映像のアイディアがたくさん出てきて、本当に使い方が無限だなと思っています。

谷口:ありがとうございます、ぜひ今後もコラボレーションさせてください。

2_五十嵐さんと菊田さんの写真_Pic ofMr Igarashi and Ms Kikuta.jpg

谷口:一方で五十嵐さんは、「飾るための動画」って、どうやったら作れるか、という点に関してどう思われますか?

五十嵐:日本の広告代理店であればこのような映像をつくることは可能だと思います。一方で個人がここまでの映像をつくるのは難しいかもしれません。それは撮影機材が高価だという問題と、日本と海外で映像の潮流が違うという理由があります。日本では映像というと、Youtubeでおもしろく編集した動画を上げることが主流ですよね。一方で海外でよく使われているVimeoという別の映像プラットフォームがあるんですけども、そちらは完全にアートっぽい映像が主流なんです。個人のクリエイターがそういう映像を自分で撮影、編集してアップロードしていて、という世界が広がっています。

谷口:確かにVimeoには良い動画がいっぱいそろっていますよね。実はAMPのプロトタイプを初めてつくったときに、「こういう雰囲気のもの」ということを実現したくて流したのが、Vimeoで探してきた映像だったんですよ。それを見たときに「なんかこれ、いい感じやん」って。関西弁で申し訳ないんですけど(笑)。自分たちが作りたいものに可能性を感じられて、それで今に至ります。

「一人ひとりがクリエイターになる時代が絶対にくる」

谷口:さきほど撮影機器が高いという話が出ましたが、五十嵐さんは撮影機器、プロ機材のシェアサービスをされていますよね。プロ機材は非常に高価で、かたやスマホでもある程度の動画は取れる、という。そんな中五十嵐さんは、いろんな人が映像をとることへのハードルを下げようとしているのかなと感じるのですが

五十嵐:そうですね、私がなぜ起業しようかと思ったかといいますと、自分の体験が元になってます。3年前に仙台から上京してきてYoutuberの会社で働き始めました。Youtuberに憧れを抱いている若い子たちはとてもクリエイティブで、「映像を創って配信したい」という想いがとても強いんです。一方で、映像を創るためにパソコンを買って、撮影機材を揃えられるほどのお金はない。統計によると、一眼レフなどの撮影機材を所有している人の中で30才未満の人の割合というのはたったの10%以下なんです。そんなある日、実際に若い子から、「五十嵐さん、クライアントから撮影依頼はもらったんですけど機材が無いので貸してくれませんか」と相談されたんです。私は自分の持っていた機材を貸して、彼らはそれを使って映像を使って、クライアント様から売り上げを頂くことができた。この体験を通じて、機材を必要としているスキルがある子に、高価な機材を持っている人たちが、安心して貸し出せるようなプラットフォームを創ることができれば、日本だけではなく世界中で、もっとクリエイティブは伸びていくだろうと確信しました。そういう映像を創る人のプラットフォームの設計をしています。

谷口:実際動画を創るということに対してハードルは下がってきていますよね。そういう潮流の中で五十嵐さんが作っているようなプラットフォームがあると、「挑戦をしてみたい」という人が、まずやってみる、っていう土台ができてくる。僕自身の興味関心で言うと、そういう流れの中でいくつかは、「これはリラックスしてみてほしい」というクオリティの高い映像があるかもしれない。それはAMPのプラットフォームで発表してもらえたら、創る道具の提供あり、発表する場の提供あり、と、そういう風になっていくといいなと感じます。

五十嵐:そうですね。あとはツール自体の進化にも注目しています。裏でAIが動いていたり、音声でツールが動かせたり。そういうツールさえ使いこなすことができれば、だれでもクリエイターになれる時代が10年以内には必ず来るだろうと思っています。そんな中で今やはり撮影機材が高いということが課題だと思っていて。そこを解決するために、「こういう機材があればこういうものが創れる」というスキルシェアや、オンラインだけでなくオフラインのコミュニティづくりというところも含めて、動画のアウトプットの源流のところを創っていければなと考えています。

AMPで映像が流れた瞬間に感じた、「これはアートだ」

谷口:今日、菊田さんの作品がAMPで流れているところを実際に見てみて、何かお感じになりましたか。

菊田:嬉しいですね。やっぱり映像は自分の子供のようなものなので、飲みながら見たいですね。(笑)あと、自分で言うのは非常に恥ずかしいですけど、これはアートだと思いました。アートとして、一つの作品として、見て、捉えてもらえたらうれしいですね。

五十嵐:私も、実際にAMPに映像を流したのをみたときに結構衝撃的で。お値段次第なんですけども家に欲しいなと

菊田:うん、私もです。

五十嵐:こういう洗練されたデザインのものが家にあって、素敵な映像が流れてくるのを見ていれば、クリエイティビティがあふれてくるんじゃないかという期待があるんですね。

谷口:これをみて「アートだと感じた」と言っていただいたのは、今の時点では最高の誉め言葉だなと思います。正直なところ、作っている側としては、一般的なサイネージとのちがいを理解していただけるかという心配があるんですね。あえて形状を正方形にしているのも、サイネージとAMPとでは体験の仕方が違うんだということをわかりやすく伝えたくてやっています。あとは、表面がガラスで艶があるように見えると思うんですけど、これは絵画をイメージしています。絵画の額縁であれば、カチッとした額縁の中に表面はガラスというのが一般的ですよね。そういう作品をきちんとおさめている印象とか、アート性とかはとてもこだわってつくっています。

4_3人と展示されているAMP_Three and AMP_original_rev.jpg会場にもAMPを展示してみていただきました

映像の制作と体験の不一致、そして映像の未来とは

谷口: GCカタパルトを始めて以来ここ1-2年、クリエイターさんとディスカッションする機会を積極的にもっています。印象的なのが「実はVimeoにアップロードしてもそれが出口じゃないんですよ」って言われたことがあって。そのとき映像の特異性に気づいたんです。例えば絵画だったら、キャンバスに絵を描いて作品ができる。写真も、撮影して、焼くという行為を経て作品になる、どちらも創るということと作品が1対1で対応している。でも映像作品って違うんです。創った後、「で、これ、どうやって渡すんでしたっけ」ってなるんですよ。一つの解は映像プラットフォームに載せて、スマホなどでみてもらう。それでも映像ディスプレイの性能はクリエイターのものと違うかもしれない。制作と体験の不一致みたいなものがすごく起こるメディアなんだなと初めて気づきました。この点、菊田さんのような作品を創られる方から見たらどう思われるんでしょうか。

菊田:ユーザーがどういう風に視聴するかという大前提を押さえてやってますね。今は、最初からスマホで見られることを想定して作っています。

谷口:今日流していただいている映像もやはりスマホで見られることを想定して創られてるんですか?

菊田:そうですね、店頭や駅のサイネージという場合もあるんですけど、基本的にはスマホ・SNSで見られるだろうなと。なのでその小さいサイズを想定してつくっています。 

五十嵐:どういう視聴体験を作るかという話で言うと、例えばWeWorkさんでも絵がいくつか飾られていますけど、それをAMPに置き換えることも考えられますよね。AMPという映像アートを彩るデバイスがあることによって、創ったものがたくさんの人の目に触れるというのは、クリエイターにとっては貴重な体験になるだろうなと思います。もしかしたら、この映像を創った人はだれだ?となって、映像が買われるようなケースも出てくるんじゃないかと思うのですが。

谷口:人が暮らしている空間の価値を高めてくれる、すると創る側と使う側とのすごくいい関係性ができるだろうと思っているんですね。「誰が創ったの」と気になって、繋がっていけるような、そのクリエイターの方が世の中に出ていけるスタートラインになるようなことができたらきっと面白いだろうなと思っています。結構動画の世界には埋もれている良い映像、クリエイターが多いと聞きます。作者自身のストレージに入っているだけで、まだ何の価値にもなっていない作品もたくさんある。それが何らかの形で掘り起こされてきて、価値を生む、そういった機会を提供していけるといいなと思っています。

5.5_参加者の皆さま_Attendees of the event_rev.jpg参加者の皆さまとの議論も盛り上がりました。

5_GCC特製ケータリング_Special Catering.JPGケータリングもゲームチェンジャー・カタパルト仕様です

谷口:今日は会場にもクリエイターの方が何人かいらっしゃいますが、五十嵐さんもおっしゃっていたように、誰でも映像を創れるようになってきているということの影響はすごく大きいと思っていて。今後はそういう風に「映像を創る」ということがどんどん開放されていって、従来であればすごい人しかできなかったものが誰でもできてしまうという「民主化」が進むともっと面白いことが起こるんだろうなと思っています。今後はアートとしての映像みたいなものが認知されてきて、文化が変わっていくのかなと。それをまさにやっていらっしゃる菊田さんのような方と、創るためのプラットフォームをつくろうとしていらっしゃる五十嵐さんとWeWorkさんでご縁を頂いてお話させていただいているのがありがたいなと思っています。今後も、ぜひ一緒に色々とやらせてください。今日はありがとうございました。

菊田・五十嵐:ありがとうございました。

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菊田あいり

ディレクター・映像作家

https://www.airi-kikuta.com/

1988年生まれ。HIPHOPのクラブで5年間VJとして活動。モーショングラフィックを得意とし、武道館でのLIVEや東京コレクションなどの映像も担当する。VJならではのリズム感覚とニューヨーク留学の経験を活かし、現在は主にファッション業界やコスメ業界のブランドムービー、店頭や街頭などのデジタルサイネージ、多くの媒体のデジタルコンテンツなど、幅広い制作に携わっている。

6_菊田あいりさん_Airi Kikuta_rev.jpg

五十嵐典之

CREARC株式会社 代表取締役社長・モデレーター

http://crearcinc.com/

プロフィール:1978年生まれ。昨年クリスマスに創業。撮影機材特化型のシェアリングアプリ「Totte(トッテ)」を今年夏にローンチ予定。

7_五十嵐典之さん_Noriyuki Igarashi_rev.jpg

谷口 旭

パナソニック株式会社 アプライアンス社 AMPプロジェクトリーダー

http://gccatapult.panasonic.com/ideas/amp-world.php

プロフィール:1977年生まれ。パナソニック株式会社にて約10年間、ハードウェアエンジニアとして薄型テレビの開発に従事。主に外装のデザインやテレビ本体の構造の開発、素材開発などを手掛ける。「いい商品を作ってもすぐに価格が下がってしまう」状況に危機を感じ、2014年から新規事業プロジェクトに参画、そこで"AMP"の元となるコンセプトを立案。2016年から活動のフィールドをGame Changer Catapultに移し現在に至る。AMPプロジェクトリーダーとして、事業化を目指し活動中。

8_谷口旭_Akira Taniguchi_rev.jpg

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