Dec 15, 2022

持ち続けたのは「諦めない心」。本業と有志活動の共創を目指すメンターが伝えたい想い

Game Changer Catapult

持ち続けたのは「諦めない心」。本業と有志活動の共創を目指すメンターが伝えたい想い

Written by Game Changer Catapult 事務局

新規事業に挑戦する人たちを支えるパナソニックのGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)で、メンターとして活動する福海由加里。セミナーの企画や新規事業プロジェクトチームのサポートに取り組む福海が力を入れるのは、社内の本業だけではありません。福海は「本業と有志活動の共創」を目指し、宇宙ビジネスのアイデア創出のための有志活動集団「宇宙人クラブ」を設立、会長を務めています。そこで、社外の有志活動が本業にどのように活きているのかを伺いました。


▶︎宇宙人クラブ

 

特許庁にも認められた「宇宙人クラブ」の設立の経緯と、諦めない想い

福海「私が本業と並行して有志活動を行うようになったのは、パナソニック入社後、知財分野の仕事に関わってからです。当時、知財を活用した新しいビジネスアイデアを考える機会があり、その経験から『これからは新しいことをやらないといけない。こうした取り組みを続けなければ!』と感じました。その後、『知財活用は単発のイベントで終わらせず、継続が必要だ』と会社に訴え、一定の期間内にどこかの事業場にアイデアを採用してもらう、という条件付きで社内での活動が許可されました。そうして立ち上げたのが『日曜倶楽部』です。エンジニアを中心に有志メンバーが集まり、普段の業務とは関係なく、自由な発想でアイデア創出と初期の概念実証(PoC)を行う団体として、2016年7月に約20人でスタート。時間の余裕はありませんでしたが、なんとかいくつかのアイデアのうちの一つをB2B見込み顧客に直接プレゼンする機会を得て、良好なフィードバックを頂けたため、それを形(ソリューション)にしていくことで事業プロジェクトにつながりました。そのコンセプトモデルが2017年3月のSXSWに出展した「Bento @ your office (※1)」です。また、この初期ソリューションに基づいてパートナー企業と共に実証実験を進めることが決まり、両社で共同プレスリリース(※2)を行いました。このプロジェクトは、その後、紆余曲折を経てピボットし、最終的にはGCカタパルトで2021年まで推進していた『totteMEAL(トッテミール)(※3)』に形を変えました。」


※1 SXSW2017にも出展した「Bento @ your office

※2 実証実験パートナーとの共同プレスリリース

※3「totteMEAL(トッテミール)」

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「宇宙人クラブ」の設立以前にも新規事業アイデアを生み出すために活動する団体を発足させていた福海。「日曜俱楽部」はどのような経緯で「宇宙人クラブ」に変化したのでしょうか。

福海「団体存続の条件を達成したにもかかわらず、活動を承認していた上司の退職や、『知財の仕事と関係ない活動をしている』という部署内からの反対意見などが重なり、『日曜俱楽部』は活動終了となりました。それでも諦めるのは悔しいので、有志団体として再始動することにしました。私が幼少期の頃から関心を持ち、楽しんで続けられそうな『宇宙』にテーマを絞り、新たに設立したのが『宇宙人クラブ』です。会社の団体ではないため社名を掲げることはなく、自費で賄う予算も限られていましたが、活動を続けて20228月時点で約420人のメンバーが所属するまでになりました。自分の勘を信じて、もうすぐ宇宙が来る!とブームをサキドリしたのもうまく当たったのかなと思います」

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手作りの宇宙人カチューシャを装着する福海

「日曜俱楽部」の活動終了にも折れず、今度は完全に有志活動として再スタートした福海ですが、400人を超えるメンバーが集まる「宇宙人クラブ」とはどのような団体なのでしょうか。

福海「団体の名前には『宇宙ビジネスのタネ創出を目指す有志活動集団』であることに加えて『宇宙人みたいな変わった人の集まり』という意味を込めています。特徴的な名前のため、一度見たら忘れないと好評です。『宇宙人クラブ』のメンバーは、職業、年齢、性別、国籍などの枠を超えて多様な人が集っています。発足時から毎月1回以上のイベントを一度も欠かさず継続開催しています。もともとは大阪を拠点に活動していましたが、コロナ禍を機にオンラインへ切り替えたことで、活動が日本全国へ、そして世界へと広がりました。今は『宇宙人チャンネル』『宇宙人クラブYouth』『宇宙人電子工作リアルイベント』の3種のイベントを中心に開催。メンバーのキャリア開発にもつながっています。こうした取り組みが、『イノベーションの起承転結(※)』のうち、『起』と『承』の役割を担っています」


『イノベーションの起承転結/竹林一氏』

福海「設立当初は『有志活動は知財の仕事と関係ない』と思われることもありました。けれど、『宇宙人クラブ』は知財戦略が優れたスタートアップ企業や団体を表彰する特許庁の『IP BASE AWARD』を受賞し、言わば知財の総本山である特許庁から認められました。その後もいろいろな壁を越えながら、進んでいます。


第1回「IP BASE AWARD」受賞の9企業・団体を発表 | IP BASE

スタートアップ×知財のベストプレイヤーが決定 : - ASCII STARTUP

宇宙ビジネスのセミナー企画に大きな反響。ビジコンへの影響にも期待

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NASAアジア代表 ガーヴィー・マッキントッシュ氏(上段左から4番目)をGCCにお招きし、イベントを開催

新規事業のアイデア創出から事業化を経て、サービスや製品が世に出るまでを起承転結に例える「イノベーションの起承転結」という考え方を基に、「宇宙人クラブ」の意義を語った福海。そうした有志活動の経験は、GCカタパルトでどのように役立てているのでしょうか。

福海「『宇宙人クラブ』のネットワークを駆使して、NASAJAXAと連携した企画を進めたり、宇宙業界の有名人を招いてセミナー、ワークショップを実施したりして、Game Changer Catapultに今までになかった新しい社外からの風を呼び込んでいます。それと、実は宇宙と地球はたくさんの共通課題があります。JAXAとの共創も宇宙というキーワードを呼び水にしながら地球の課題解決や地上の市場拡大を狙っています。これらの企画は反響も大きく、今後のGCカタパルトのビジネスコンテストにも『宇宙』、『地球』、『未来』をテーマにした社会課題解決型アイデアの応募が増えるかもしれません。それらアイデアの中でパナソニックのビジョン、方針に当てはまるアイデアを絞り込み、磨き上げていきたいと思っています。またメンターとしては、プロジェクトメンバーの主体性を重んじ、伴走することを基本にしています。その上で、従来の枠組みを超えた発想転換のヒントなどを伝えて、広い視野で未来を創造していける人材となってくれるようにサポートを続けていきたいと思っています」

「やらなかったこと」は後悔する。一度きりの人生、諦めずに挑戦を

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どのような課題があっても諦めずに進んできた福海の経験や多角的な視点は、GCカタパルトの仕事にも活かされていました。そんな福海がこれからの未来と、新規事業への挑戦について語りました。

福海「新規事業とだけ聞くと、キラキラした夢や情熱を持って取り組める『やりがいのある仕事』とイメージする人もいると思います。もちろんロマンや情熱を根底に持つことも大切ですが、辛く困難なことに直面したとき、漠然とした気持ちだけでは乗り越えられないこともあります。新規事業は大変なことも多いので、中途半端にならないよう、確固たる意志を持ってやり遂げようとする気持ちが大切です」

「新規事業への挑戦は楽しいことだけではない」。福海は現実的な厳しさも伝えながら、どのような考え方でアイデアを生み出してほしいか話します。

福海「私は今まで『思い悩む暇があれば前進する』という姿勢で進んできました。事業を始める時、企業では事業計画を立て、運営方針に沿って進めることが求められます。しかし、これからの時代は社会の変化も大きく、考えたプランやコンサルタントの想定通りに進むとかどうかは分かりません。1年前に立案した計画ですら古新聞になってしまうこともあります。多様化する今の時代だからこそ、計画通りでなくとも、自分の直感で進める方法もありかもしれません。そして、事業を進めるうえで、未来を見据えて行動することは重要です。何事も目の前しか見えていないと、どん詰まりになってしまいます。ですので、目標を『宇宙』のような遠いところに設置して、広い視点で非連続の斬新なアイデアを考えてほしいと思っています。そうして、上から降りてくる仕事をただ受動的に取り組むだけでなく、社員各々自らが発案し、推進し、結果を出す、そういう能動的で自由闊達な、ワクワクが溢れる素敵な会社になって欲しいなあと願っています。そのためには先ず自らが率先して困難や批判を乗り越えて取り組み、一刻も早く実績を上げるようアクションしています。2040年からのバックキャスティングという視点で、2040年の世界の主役は自分たちだ!と若い世代の方々に気付いて頂き、共に未来を創っていけたらいいな、と思っています」

福海「一度きりの人生なので、大変だと感じても諦めずに続けてみることが大切です。困難を乗り越えた経験が私たちを成長させてくれますし、多くの感動をもたらします。人間が人生の最後に最も後悔することは『やらなかったこと』だと言われています。だからこそ、『自分が実現したい大きな目標に向かって挑戦してください』と伝えたいです」

自らの信念を貫くため、本業と並行してさまざまな活動を続けてきた福海は、自分のブランドを生み出し、今も磨き上げ続けています。ここまで進むのには壁も多かったと話す福海ですが、「正面突破で進んできたが、気が付けば『道』ができていた」と、これまでの挑戦を振り返っています。熱い行動力で突き進む福海の道は、これからもまだまだ続いています。

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