Jun 10, 2022

これからの30年は常識が変わる。Unlearnの精神で新たなイノベーションを

Game Changer Catapult

これからの30年は常識が変わる。Unlearnの精神で新たなイノベーションを

Written by Game Changer Catapult 事務局

新しい生活文化や、心躍る体験を実現できる未来の「カデン」を生み出すための新規事業創出活動をサポートするパナソニックのGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)。

GCカタパルトは、ビジネスコンテストの開催、社内起業や新規事業開発へのモチベーションの向上、アイデアのきっかけ作りになる情報発信など「新しい価値を生み出すための活動」を続けています。

今回はサステナビリティ経営やESGEnvironmentSocialGovernance)ファイナンス分野の専門家である夫馬賢治さんを講師に招き、セミナーを開催。「SDGs/サステナビリティが導く新たな事業機会とは?」というテーマで、SDGs(持続可能な開発目標)に沿った事業開発の必要性をお話ししていただきました。

ゲスト講師:夫馬 賢治ふま けんじ)

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サステナビリティ経営コンサルティングやESG投資アドバイザリーを手掛ける株式会社ニューラルの代表取締役CEOを務める。環境課題や社会課題に対応した経営戦略や投資の分野で東証一部上場企業を数多くクライアントに持つ。環境省のESG金融分野の審査委員としても活動している。

これからのサステナビリティは企業や投資家が主役

まず、夫馬さんはサステナビリティが世界的に注目されるようになった背景について「今、社会は激流の中にいる。これまで見聞きしてきた過去30年と、これからの30年は激しく違う。常識が変わってくる。これがサステナビリティという単語が世界で注目されるようになった経緯」と話しました。夫馬さんはGCカタパルトの理念「Unlearn Hack」にも触れ「だからこそ、今まで学んできたことや固定概念を捨て去り、未来思考を持つことが重要になる」と訴えました。

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では、なぜ社会の常識がこれから大きく変化するのか。それはサステナビリティの裏側にある「メガトレンド」と呼ばれる世界の大きな動きが関係するためだといいます。夫馬さんは2010年以降のメガトレンドの一例として以下の9つの事象を挙げました。

  1. グローバルパワーシフト
  2. 人口と高齢化
  3. 都市化する世界
  4. 未来の新興国・中間層
  5. エネルギーの未来
  6. 気候変動
  7. 食糧の未来
  8. 紛争と戦争の未来
  9. 世界を変える科学と技術

このように、アメリカやヨーロッパが中心だった世界から中国やASEAN(東南アジア諸国連合)にパワーが移るグローバルシフトや、カーボンニュートラルのような転換点を迎えることで社会はさらに変化します。メガトレンドに関連して、夫馬さんは「実は、世界的にサステナビリティとはこのメガトレンドを指すことが多く、SDGsという単語の知名度が高いのは日本だけ。逆に世界ではESGが中心で、SDGsはあまり知られてない」と語り、私たちの身近な存在になりつつあるSDGsの意外な事実が明かされました。日本企業に求められているのは、メガトレンドと呼ばれる事象のなかで、成長する事業を創出することだと話しました。

そもそもSDGsとは、MDGs(ミレニアム開発目標)を前身とする、2015年の国連サミットで採択された2030年までの活動目標です。SDGsMDGsで達成できなかった目標を、政府だけではなく企業や投資家が担い手になって達成することが目的で、実際に国連機関やEU(欧州連合)も企業を重要視しています。これについて、夫馬さんは「日本ではSDGsというと政府を中心に活動している印象があるが、海外では企業が主役。世界的には国連と企業が対等にパートナーシップを結び活動している」と解説しました。

また、パナソニックなどの企業がSDGsで求められるのは「単なる社会に優しい活動」ではなく「イノベーションを発揮し課題を解決しながら経済成長すること」だと話しました。

人口問題や気候変動は政府が動くのを待つのではなく、企業が率先して行動を

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SDGsの背景が分かったところで、次は具体的にどんな課題があるのか。夫馬さんは例として人口減少問題を挙げ「今後、日本の人口は江戸時代の頃の水準に逆戻りする」と説明。続けて「日本は明治維新後に驚異的なスピードで人口が増加したが、これからは驚異的なスピードで人口が減る。あと80年ほどで江戸時代くらいの人口になることが予想されており、社会、地域、雇用、マーケットなど全てが変化する。働き方はすでに変わってきていて、日本は労働力を過去10年間、女性や高齢者が社会進出してカバーしてきたが、限界が近い。2020年からは本格的な人手不足が始まっている。そうなると、家事や仕事をどうやって担うかという課題が生まれ、ライフスタイルも変化する」と日本の人口減少による見通しを語りました。

さらに「現在、すでに建築や警備員など、人手不足の職種もある。どんなに待っても採用できない職種は増えていて、例えば家事代行サービスなども需要はあるが、人材は足りない。なので、マーケットを拡大しようとしてもできない現状がある。それに人口減少と同時に『生活が苦しい』と回答する世帯も増えている」と解説。世界的にもアメリカ・欧州・日本市場は縮小し、将来は中国・インド・ASEAN市場がビジネスの主戦場になると予測しました。

また、人口問題に加え、環境問題も深刻化しています。世界の1年間の平均気温は産業革命期に比べて1.2℃上昇しています。気温が上昇すれば気候変動が起こり、巨大な台風も発生しやすくなり、日本は今以上に災害が増えてしまいます。それに気候変動は感染症の増加にも影響するとされています。現在のコロナ禍のようなリスクが高まれば、再び社会は大きな打撃を受けることになります。

環境問題は日本だけではなく、世界規模でも進んでいます。これまでの自然災害の保険損害額は増加する一方です。夫馬さんはこうした現状に対して「すでに海外では海面上昇リスクなど、気候変動に警鐘を鳴らしている地域もあるが、カーボンニュートラルの対応にしても日本は遅れている。政府が動くのを待つのではなく、企業が率先して行動する必要がある」と海外の事例を交えて話しました。

日本や世界を取り巻くさまざまな課題について触れましたが、夫馬さんはそうした課題に対して「金融機関の影響力が増している」と話しました。環境NGO(非政府組織)と金融機関は良好な関係で、金融機関も投資先にカーボンニュートラルを求める時代に。投資家側も上場企業のESGを細かくチェックし、「社会課題を解決しながら経済成長を促すイノベーションを起こす企業を応援しよう」と直近の利益ではなく、長期的な観点から投資先を決めようという流れになっていることが、今回の講演からも見えてきました。

重要なのは新たな価値を提供するディスラプション(破壊)的なイノベーション

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サステナビリティについての現状や背景が整理できたところで、次は実際に「有望な事業分野をどうやって探すか」というポイントについて、夫馬さんは最初に「ESG」と「SDGs」という言葉そのものについて取り上げ、次のように解説されました。

「先ほど『SDGsの知名度が高いのは日本だけ』と話したように、海外では基本的にSDGsではなくESGの観点からイノベーションを起こす企業が注目される。ここで重要なのが『ディスラプション(破壊)的なイノベーション』。これは積み上げ型と異なり、業界や事業をガラリと変えてしまうようなイノベーションで、現在の企業に求められている。ディスラプションには、提供しているサービスの料金を劇的に引き下げ、低所得者でも購入できるようにするローエンド型破壊と、潜在的なニーズを見つけて価値を発掘する新市場型破壊がある。後者は未来の顧客が何を求めるのか考える必要があるが、人口や気候変動問題による将来的な変化を予測したように、サステナビリティの観点で考えれば、世界がどう変化していくのか予想できるようになった。だから、実際にEV(電気自動車)のように新しい事業が生まれている」

ここで挙がったディスラプション(破壊)的なイノベーションのうち、課題を先読みする新市場型イノベーションについて、夫馬さんは自然環境の変化から事業を探す例を挙げました。

「まずは『考えて特定する』。自然環境の変化が社会にどんな影響を与えるのか、じっくり深掘りする必要がある。次にどれくらい大きな変化なのか『アセスメント』する。そして『どんな事業を展開するか』を対策として考える。サステナビリティ事業を考えるときは『環境に良さそうだから』ではなく、大規模なイノベーションのために『どんな仕組みを変えるか』を深く考えてほしい」

夫馬さんが話すように、破壊的なイノベーションを生み出すためにはあらゆる深掘りが欠かせません。「新しい知識を得る」「知識をより深く知る」この2つの両立が最も重要です。

受け身の状態では未来は変わらない。自分から考えて新しい価値を生み出そう

講演が終わると、熱心に聞いていた参加者からは、積極的に夫馬さんへチャットで質問が投稿されました。夫馬さんはアイデアや情報の見つけ方について問われると「日本にいると受け身の姿勢ではサステナビリティにまつわる情報を集めにくいので、意識的に探索する必要がある。政府が発行している白書などの分厚いドキュメントや海外メディアを活用できれば」と話しました。

ほかにも「『未来はこうなる』という受け身の状態が問題で、未来を創る意思がないのが問題では」という参加者からの意見には「実際にサステナビリティ事業を起こしている人たちは、受け身ではない。将来の悲観的な予想があるのなら、何が原因でどう社会が変わっていくのかを整理している。何を変えれば将来が能動的によくできるのかを考えて動くことが大事」と、情報を集めて知識を増やすだけではなく事業を起こすマインドの部分も解説。参加者はSDGs関係の事業を考える上でのポイントや、今回の講演内容などについて意見を交換し、理解を深めました。

社会が抱える課題は他人事ではない。失敗を恐れずにゲームチェンジを目指そう

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今回は私たちの未来にも関わる身近なテーマとして「SDGs」や「サステナビリティ」をキーワードに、メガトレンドから考える新たなイノベーションについて語っていただきました。

これからの社会では、カーボンニュートラルの実現など、サステナビリティが企業に深く関わってきます。私たちパナソニックも商品や価値を供給する人や企業などを含めた大きなグループとして、メガトレンド、そして投資家の期待に応えられるような長期視点での事業開発を意識した活動を求められます。

それに、講演で語られたように人口問題や気候変動は生活に直結する課題であり、他人事ではありません。世界が抱える課題を認識し、原因と解決方法を探ることで予測できる未来のニーズもあると思います。GCカタパルトは、そんな社会の課題を解決するアイデアや、新しい価値を生み出す熱い情熱を持った人を応援しています。失敗を恐れずに挑戦し、私たちと社会のゲームチェンジを目指しましょう。

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