Mar 12, 2018

おにぎりの美味しさを世界へ! 職人の手仕事を再現した「OniRobot」が可能性を拓く

Game Changer Catapult

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おにぎりの美味しさを世界へ! 職人の手仕事を再現した「OniRobot」が可能性を拓く

社内の選考プログラムで「サウスバイ・サウスウエスト(以下SXSW)」のブース出展を勝ち取った「OniRobotプロジェクト」は、BtoBによる北米での事業展開を目指しています。今回はSXSWを前に、一般社団法人おにぎり協会 代表理事 中村祐介さんをお迎えして、OniRobotプロジェクトメンバーと「おにぎりを世界へ伝える」ためのアイデアを語り合いました。

補欠からの逆転劇......国内から海外へ目を向けることで起きた「ゲームチェンジ」

onirobot_0008__DSC5636.png(左から)一般社団法人おにぎり協会 中村氏、パナソニック加古、パナソニック高

中村祐介さん(以下、中村):加古さんとお会いしたのは、確か北海道の「ゆめぴりかコンテスト」で官能評価の審査員としてご一緒させていただいたときでしたよね。

加古さおり(以下、加古):そうです! ちょうどそのとき、ゲーム・チェンジャー・カタパルトの最終選考に7チーム残っていたんですけど、私たちはもう補欠の補欠、7番目で。

中村:「まだ通るかわからないんですー!」とおっしゃっていましたけど、見事SXSWへの切符を掴みとって。どうやって逆転されたんですか?

加古:もともと私は炊飯器の開発をしていて、とにかく白いご飯の魅力を日本人に伝えたい、ということで取り組んでいたんです。けれども補欠ということもあって、リソースも予算も限られているなかで、既に開発されていたものの、陽の目を見ていなかった「OniRobot」に注目したんです。健康意識が高く、和食の人気も高い北米で、日本文化としての「おにぎり」を広め、ファンを増やしていく。そしてそこで「おにぎりブーム」が巻き起これば、逆輸入の形で日本でも消費が伸びるのではないか、と。「炊飯器で美味しいご飯を」というプランから、「海外でおにぎりを」というプランへ転換したところ、審査員の方々からも非常に好評を得るようになったんです。

onirobot_0009__DSC5606.pngパナソニックアプライアンス 炊飯器技術部 ライスレディ 加古さおり

中村:なるほど。やっぱり「おにぎり」の力ってあるなぁ(笑) OniRobotはこれまでのおにぎり製造機とどう違うんですか?

加古:この子は、「名人が手でおにぎりを握る動作を再現する」というコンセプトで開発しました。
実際に手にぎりの動きを解析すると、とても複雑な動作をしていて、いくつもの稼働軸(モーター)が必要だということがわかったのです。これを、設計的にシンプルに、モーター1個での動作にまで落とし込むことに最初の苦労がありました。

次に、握るときにもノウハウが必要でした。力をかけすぎるとご飯がつぶれ、ゆるすぎると持った瞬間に崩れてしまいます。適度に空気を含んでフワッとさせるのには、何回握るのがいいのか、どれくらいの荷重で何秒保持させるのがいいのか等々、いろいろな条件でトライアンドエラーを繰り返しておにぎりシーケンスを完成させました。これは特許技術ですよ!実際にCTスキャンを撮ってみると、断面もこれだけ違うんです。

中村:おお、面白い(笑)すごいじゃないですか!

コンビニなどで販売されている型押しのおにぎりコンビニなどで販売されている型押しのおにぎり

OniRobotを使ったおにぎり。適度に空気を含んでふわっとしたおにぎりを実現した。OniRobotを使ったおにぎり。適度に空気を含んでふわっとしたおにぎりを実現した。

加古:全体的な提案としては、おにぎり専門店をフランチャイズ(FC)化し、OniRobotとIoTを使った注文システムを組み合わせることで、職人が握ったような美味しいおにぎりを、簡単かつ最小限の設備投資と人件費で提供できる。そして北米のお客さまにとっても、ハンバーガーやホットドッグに代わるヘルシーなファストフードとして、新たな価値を提供できるのではないかと考えています。

日本人の潜在意識にある「たかがおにぎり」!?

中村:高さんは途中からチームへ参加したんですか?

高 (以下、高):加古さんがGCCに参加していることは知っていて、「面白そうだな」とは思っていたんです。

加古:我々の職場としてもなかなかない機会なので、北米を目指すにあたって、誰か強力な助っ人はいないかと上司に相談したところ、「高さんしかいないでしょ」と。彼女は普段、炊飯器の基板設計を担当しているのですが、まだ入社2年目で若いし、新しいことをしたがっているし、英語も喋れる、と。

:まさか自分が参加できるとは思っていなくて。誘ってもらって、夢みたいな感じでした。とても嬉しかったです。

中村:でも確かに、日本ではおにぎりが当たり前すぎるから、海外からの視点というのは必要ですよね。高さんの地元ではおにぎりって知られていましたか?

:私の地元にはあまりコンビニがなくて、その頃は知りませんでしたが、大学で上海へ出てくるとたくさんコンビニがあったので、そこにはだいたい置いてありました。おにぎりは「忙しいときに食べるもの」という感じで、特に美味しいものだとは思いませんでした。

中村:そう、アジア圏は既におにぎりが浸透しつつあるのですが、残念ながら「冷たくて堅い」というイメージがついてしまっているんですよね。

加古:そうなんですよね。だから、私たちも北米かヨーロッパ市場のほうが、可能性があるなと感じていて。

:日本人って本当におにぎりが好きですよね。中国人からすると、ご飯と必ずおかずを一緒に食べないと物足りない感じなんです。でもみなさん、おにぎりだけを美味しそうに食べている。

onirobot_0005__DSC5675.pngパナソニックアプライアンス 炊飯器技術部 高

加古:会社の食堂でもみんな、おにぎりを持ってきて食べていますからね。

:最初にこのプロジェクトのことを知ったとき、「お米文化を広げたい」というのはピンと来なかったけど、「OniRobotで海外の人におにぎりを食べてもらう」というのは、とてもわかりやすくて、素晴らしいアイデアだと思いました。

中村:日本だとどうしてもおにぎりが当たり前すぎて、その価値を再認識してもらうのが難しいんですよ。たとえば、ちょっと豪華な具材を入れて、1つ500円とかで売り出すと、若い子たちのほうが積極的に手にとってくれるんです。

加古:あぁ、確かに。駅の売店で「おにぎり1個300円」とかだったら、ちょっと高いな、と思っちゃう。

中村:ほら、加古さんの潜在意識にも「おにぎりなんて」というのがありますよ(笑)コンビニが日本に誕生したのが1970年代なんですけど、それ以前はおにぎりって「余ったご飯をおにぎりにしておこうか」みたいな、タダ同然のものだったんです。ですから、そういう人はコンビニでサンドイッチを買っちゃう。

onirobot_0012__DSC5591.png

加古:すみません......それ、まさに私ですね(笑)

中村:だからこそ、このプロジェクトでおにぎりを北米に広めて、それこそちょっと高級なイメージがつけば、日本でもまたおにぎりの良さが再認識してもらえるような気がするんです。先進国では特にクオリティ・オブ・ライフ、ヘルスケアに対する関心が集まっていて、Facebookの日本オフィスに遊びに行ったときも、外国人エンジニアたちがおにぎり片手にデスクワークしていたんですよね。

加古:あぁ、まさにそういうのが理想ですね。

中村:日本人は海外の人が評価すると、途端に日本文化を再評価し出すじゃないですか(笑)ですからぜひSXSWで、OniRobotが評判になって欲しいですね。

海外からの逆輸入で狙う「ご飯文化」の復興

加古:中村さんにはぜひ、SXSWの作戦にも協力していただきたいのですが、実際に海外でおにぎりを広める際、どういうふうに展開されていますか?

中村:やはりそもそもおにぎりを知らない人が多いので、一生懸命説明します。やっぱりパッと見で「SUSHI」と呼ぶ人は多いんですよ。「いや、これはおにぎりという和食で、江戸時代に生まれた寿司よりも歴史が古く、弥生時代からあるものなんだ」と。具材が中に入っている、というのも説明しないといけませんね。寿司みたいにシャリの上にネタが乗っているわけではありませんから。

加古:なるほど。そこから説明しないといけないんですね。

中村:でも、若い人やアニメが好きな人が通りかかると、指を指して「POKEMONで見た!」と言う。「『けいおん!』で見たことがある!」とかね。

:確かに、海外の人に話を聞くと、「アニメやゲームを見て知った」という人が多いですね。「ネットで調べて、はじめて食べ物だと知りました」とか。

中村:そう、「ファイナルファンタジーでもおにぎりがアイテムであるけど、なんでこれでHP(ヒットポイント)が上がるんだろう?」って(笑)でもやっぱり、まずはそういうところから興味を持ってもらう、というのは一つですね。僕らがミラノ万博でブースを出したときは、「忍者もサムライも食べていた!」というのを推していきました。それと、このおにぎりの三角形は、一説によると富士山を模したものだと言われているんです。

加古:えぇ! そうなんですか!

中村:山岳信仰の一種で「富士講」と言って、元気な青年にみんなからのお金と願いを託して、富士登山をしてもらっていたんです。それで、残った人々は、富士山を模したおにぎりを食べて、富士登山にあやかっていたという説もあります。「フジヤマ」「ニンジャ」「サムライ」なら、絶対に海外の人も知っていますからね。だから、SXSWのブースで忍者の格好をしておにぎりを配れば、絶対にみんな集まってきますよ! あれはまさに「お祭り」ですからね。

加古:そうかぁ......じゃあ、高さんに着てもらおうかなぁ(笑)

:私ですか?(笑)

中村:おにぎりの具材はどんなものを考えていますか?

加古:だいたい4種類くらい用意しようと考えています。アボカドベーコンチーズと肉味噌わさびに、純和風が良い人のために鮭と昆布を。多めに用意して、現地の反応を見て調整しようと思っています。

中村:いいですね。海外はヴィーガンの方も多いので、昆布はもちろん、梅干しも用意しておくといいと思いますよ。

加古:味付けはやはり、濃い目のほうが好まれますか?

中村:間違いなくそうですね。あと、「和牛」もかなりブランド力があるので、「和牛そぼろ」とかいいかもしれない。

加古:いいですね! あぁ、ギリギリまで悩みそうです......。

中村:OniRobotをきっかけに、世界中の人がおにぎりを食べるようになったらいいですよね。それこそ、サンドイッチの代わりになるくらい。おにぎりのほうがずっとローカロリーだし、スタイルを気にする女性にこそ食べてもらいたいんですよ。

加古:米と水だけでこんなにふっくら炊けて、美味しく食べられる主食って、世界的にも珍しいと思うんですよね。この美味しさをなんとしてでも、たくさんの方に知ってもらいたいです。

中村:そうですね。僕が今、問題視しているのは、どんなに生産農家さんが手塩にかけて育てても、米の消費量がどんどん落ちていて、価格も上がらないんですよ。やっぱり、ちゃんとその価値に見合った収入を得てもらいたい。日本人は「米と水はタダ同然だ」と思って、その貴重さを見過ごしてしまっているんです。パナソニックさんという大きな会社が、こういった挑戦をすることで、きっといい影響が現れるのではないかと、期待しています。

:ちょっと緊張しますけど、楽しみたいですね。

加古:そうですね。がんばりましょう!

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一般社団法人おにぎり協会 代表理事 中村祐介
おにぎりを通じて和食文化を国内外にひろめる活動を行うため、2014年おにぎり協会を設立。2015年、ミラノ万博日本館へ招待出展を皮切りに世界中でおにぎりの普及を推進。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などメディアに多数登場。情報提供や講演なども積極的に行っているほか、地域や企業、商品の監修やブランディングなども手がける。デジタルマーケティングの会社、株式会社エヌプラスの代表でもある。

パナソニック株式会社 キッチンアプライアンス事業部  炊飯器技術部 技術企画担当主幹  加古さおり
入社以来、IHジャー炊飯器を中心とする調理ソフト開発一筋で25年。愛称ライスレディ。
家庭用炊飯器での「ごはんのおいしさ」の追求の傍ら、業務用やグローバルなど、いろいろな「炊飯」に携わる。現在は炊飯器の技術企画を担当し、日本全国のおいしいお米の探索や未来の炊飯器の提案に取組んでいる。

パナソニック株式会社 キッチンアプライアンス事業部  炊飯器技術部 炊飯器制御設計課 グローバル市場係 高 雅菲
2016年入社の2年目社員。中国河北省出身、修士学位を取るため日本に留学後、良い品質の製品を人々に届けたいという想いでパナソニックに入社。 専門は電気電子工学で、現在は海外向け炊飯器の制御設計を担当。将来の夢は、世界の人々が驚く家電を作ること。

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