Jul 24, 2018

大企業でイノベーションを生み出す人材とは?

Game Changer Catapult

大企業でイノベーションを生み出す人材とは?

新規事業のチャレンジャーを生み出すボトムアップ活動「ビジネスコンテスト」を柱に、3年目を迎えたGame Changer Catapult。ここからどうやってスターを生み出すのか、人物に注目して考察する対談が実現しました。

お招きしたのは、株式会社リクルートのシリアル・イントラプレナーとして、社内事業開発プログラムやスタートアップ企業支援プログラムなど数々の新事業を立ち上げた後、今春に独立、企業内新規事業を支援する株式会社アルファドライブを立ち上げた、麻生要一氏。Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)立上げ以来ビジネスコンテストの企画・運営、及び新規事業に取り組む社員のメンタリングに携わってきた鈴木と、「大企業でイノベーションを生み出す人材」について語り合いました。

トレーニング次第で、誰でも社内起業家になれる

鈴木:私たちが新規事業を生み出すにあたって、一番重要なファクターは人だと思っています。その中で、やはり大企業で今までトレーニングされて身についてきたスキルと、新規事業にあたって必要とされるスキルは全く違いますよね? 野球からサッカーに転向するぐらい。それをどうやって育てていくか、変えていくかが、我々の一番の課題だと思っているのですが。

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Game Changer Catapult プランニングリード 鈴木 講介

麻生:私はいつも「すべてのサラリーマンは社内起業家として覚醒できる」と言っていて。誰に対しても、新規事業に取り組むスキルは育てられると考えています。新入社員が3年も経てば一人前の営業マンや技術者になるのと同じように、新規事業開発という職種があると考えて、既存事業で受けているようなトレーニングを新規事業でも積んでいけば、一定の年数で誰でもできるようになるものです。

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株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 麻生 要一氏

鈴木:そのトレーニング方法や、トレーニングの際の重要な視点は何でしょうか?

麻生:新規事業開発は実際には職種として定義されていませんし、マネージメント側も正直どういうものか分かっていない。そのため、既存事業ができる人は新規事業もできると思ってしまうんですよね。だからすぐに結果を求めるのですが、それはまだ名刺交換もできないような新入社員に対して、急に「大型受注をしろ!」と言ったり、提案に対して「それっていくらの売上になるの?」と言ったりするのと同じで。これが一番やってはいけないことです。

鈴木:きちんとプロセスを踏んで育成していくということですね。

麻生:まず歴然とした事実として、ゼロから生み出したものが世の中でちゃんと認識される規模になるまでには、やはり10年はかかるんです。企業が創業して上場するまでに大体10年はかかるように。だから、まずはマネージメントサイドが、新規事業とはそういう時間軸だと認識することが重要だと思います。とは言え、大企業の場合は10年も待てないというケースがあるならば、大企業ならではの反則プレーを使うのも手です。例えば、3年目ぐらいでグローバルネットワークの販売網を生かして国際販売ができれば、一気に売上を上げられますよね。普通は10年かかる時間軸のものを、どこかのタイミングで既存事業と掛け合わせることで短縮できるということも認識しておくと良いと思います。

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多くの人・職種が存在することこそ大企業のメリット

鈴木:大企業には多くの人がいて、いろいろな職種があります。特にパナソニックはそうなのですが、デザイナーもいれば営業マンもいるし、技術者もいる。やろうと思えば、社内でさまざまな職種を経験することができるんです。そうすることで、新規事業に取り組む際のいろいろなヒントが得られ、アイデアが出て来るのではないかと考えているのですが。

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麻生:そうですね。あと、社内にいろいろと優秀な人がいる中で上手くアサインできれば、それは非常にメリットになります。例えば、マーケティング要員が必要となった時に、「あの部署のマーケティングができる人に5%ぐらい手伝ってもらおう」とか。美容系のプロダクトを作りたいけれど、自分の事業部では美容のノウハウがないとなれば、「美容系に強いチームの人たちに話を聞きに行こう」といった動きができるのは、社内に多くの人と職種が存在する大企業ならではの強みですね。

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人のマッチングやチーミングで失敗しないために

鈴木:麻生さん曰く「どんな人でも社内起業家になれる」とのことですが、中でも特に向いている人はいるのでしょうか?

麻生:世の中に新しい価値を提供することが新規事業だと定義すると、強いて言えば顧客のために働ける人でしょうか。出世などではなく、誰かの役に立ちたいと思っている人。「目の前のお客さまを幸せにすることこそが、私がこの会社に入った理由です!」という人がいれば、向いていると思います。

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鈴木:でも「お客さまのために」とか「新しいものを作りたい」という想いはなくても、非常にオペレーショナル能力が高い人もいて。そういう人は、いざお客さまの所に行き始めると、おそらくものすごく素敵な動きができるんですよね。だから、新規事業には興味無いけれど、いわゆる会社のエースであるというような人たちの視点をちょっと変えることで、大きなパワーをもって新しい事業や価値を作るというようなことができないかと考えているのですが。そういう人たちをどうやって引っ張ろうかなというのは、けっこう悩んでいます。マインドはなかなか変わるものではないですし。

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麻生:新規事業のリーダーが、例えば顧客のことは最優先で考えられるけれど、事業計画が書けない、リスクヘッジも生産管理もできないという現況であれば、優秀なエースの方を投入するのは重要だと思います。ただ、そのビジネスが最もコアにしているインサイトやプロジェクトのwillに対して共感することが非常に重要で。スキルだけでマッチングすると、優秀な人って見切るんです。「儲からない」「非効率だ」「これでは投資回収できない」などと査定して、「可能性ないですね」とバサっと切ろうとするのですが、そういうものではないですよね。一緒になって顧客の所に行って、プロダクトの形もビジネスモデルも変えながら進捗させていかなければならない。なので、マッチングやチーミングをする時に一番重要なのは、スキルもそうですが、やはりwillのマッチング、共感みたいなところに都度立ち返ることです。そのプロセスを踏まないと、必ず事故が起きます。

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鈴木:そうですね。あと、パナソニックという、何十万もの人がいる組織で新規事業を行う意義の一つとして、今少し考えている論点がありまして。上手くチームを作って動かせば、仮にそれが数年か数ヶ月かで解散したとしても、後々非常にためになるというか。エースの人たちがそういう場に足を突っ込み、何かしら共感を抱いて新しい価値を作ったり、お客さまのためにということを実感したりして、また元いた場所に戻っていく......。それは、大きな組織で捉え長い目で見て考えると、とても大事なことかなと思っています。

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心に火を付け、チャレンジャーを増やすには

鈴木:Game Changer Catapultは3年目を迎え、今後さらにコンテストへの参加者を増やしていくことも課題なのですが。

麻生:一般論で言うと、まず1~2年目は元々新規事業をやりたかったという、眠っていた顕在層を刈り取っていけば十分ですよね。それが、3年目ともなるとネタ切れになってくるので、以降は元々新規事業なんてやるつもりがなかった人に火を付け、やる気にさせるための活動に力をいれなければなりません。そこはもうパワーを使って、研修や勉強会、ワークショップやイベントなど、ありとあらゆる手段で取り組んでいくしかないです。カンボジアや離島などに行くようなスタディツアーも良いと思います。

鈴木:セミナーや勉強会、ワークショップは開催していますが、スタディツアーはやったことがないので面白そうですね。行き先は、エストニアとかイスラエルとか?

麻生:先進的な事例を勉強するという意味ではなく、なるべく課題が根深い現場に放り込んだ方が、火が付きます。エストニアやシリコンバレーに行くと意識は上がるのですが、違うやる気になるんですよ。「私がGame Changer Catapultに応募してこのビジネスを提案しなければ!」ではなく、「なんだかいい映画を見たなぁ......」というような感覚になってしまいます。

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鈴木:なるほど。黙っているとそういったことを感じる、熱量を高める機会がまだまだ少ないというのも、大企業の課題ですね。うちは現状、なかなか世の中に出ていく機会も、課題が根深い現場に行く機会も十分作れていないので。

麻生:課題の根深い現場に連れて行って、「私がなんとかしなきゃ!」というフィールドを見つけさせてあげることですね。あとは、社内外問わず熱量の高い人、ポジティブな人に会わせるということも大切です。

鈴木:そうですね。それと、本当に頑張って活動している人たちについての発信も、もっと積極的にやっていかななければいけないと思っています。熱量を高めるという点で、若手とベテランそれぞれへのアプローチの違いってあるのでしょうか?

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麻生:若手は熱が高まりやすいですが、ベテランに火を付ける時は、けっこう事務局側の覚悟が問われます。熱量の高い人をマッチングしていくというプロセスは若手と一緒ですが、一番解消すべきボトルネックに、そもそもベテランの人たちが冷めるに至った理由というのがあるので。過去に何度もはしごを外されていると、どれだけ熱量の高い人をマッチングして、テーマを見つけて「やりましょう!」と言われても、「もう信用しないよ」と思われるんです。なので、合わせ技で「今回こそは違います! 約束します!」と、違いを明確化してコミットしてあげること。すると「そこまで言うならしょうがないなぁ」となるので。そこができるかどうかですね。

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鈴木:確かにベテランの方々は経験がある分、本当に本質的なことをよく見られているというのは私も感じていて、襟を正されますね。でも、若手も若手で難しいのが、熱しやすく冷めやすいのかなと。ベテランは火を付けるまでに時間がかかっても、一度火が付くと粘りますし、安定感がある気がします。

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麻生:それは若手だからというよりは、まだ自分のやりたいことやテーマが見つかっていないだけではないでしょうか。それならば、もっと広く探させてあげると良いかもしれませんね。私もそのあたりは今後、Game Changer Catapultのアドバイザーとしていろいろとサポートさせていただきながら、盛り上げていきたいと思っています。

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Special thanks ; 株式会社アルファドライブ https://alphadrive.co.jp/

プロフィール

麻生 要一

株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO / ファウンダー

株式会社ゲノムクリニック 代表取締役 共同経営責任者(経営・ファイナンス管掌)

一般社団法人ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション フェロー

株式会社ニューズピックス NewsPicks for Business担当執行役員

株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社(株式会社ニジボックス)を立ち上げ、経営者としてゼロから150人規模まで事業を拡大後、ヘッドクオーターにおけるインキュベーション部門を統括。社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」及び、スタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」を立ち上げ、新規事業統括エグゼクティブとして約1500の社内プロジェクト及び約300社のベンチャー企業・スタートアップ企業のインキュベーションを支援した経験を経て、自らフルリスクを取る起業家へと転身。2018年2月に企業内インキュベーションプラットフォームを手がける株式会社アルファドライブを創業。また、2018年4月に医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行う株式会社ゲノムクリニックを共同創業。

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